「光が丘清掃工場」は練馬区の総住宅数12,000戸の大規模団地の中に位置し、ショッピングセンターや高層住宅、総合病院に隣接しています(写真-1)。当工事は、この清掃工場の老朽化に伴い、平成28年6月から平成33年3月までの予定で建替工事を行うものです。既存施設の解体は、平成28年10月より開始し、平成30年12月におおむね完了する予定です。解体にあたっては、周辺が住宅地であることから、騒音、粉じんなどに十分な配慮をする必要がありました。また、解体前の調査より清掃工場の外壁および内壁には石綿を含む複層仕上塗材が使用されていることが確認されたため、建屋の解体の前に石綿含有建築用仕上塗材の除去を行いました。
写真-1 解体前の清掃工場
解体に先立ち、石綿障害予防規則に基づき石綿含有建築用仕上塗材について調査を実施しました。その結果、約2万㎡の仕上塗材に石綿含有が確認されました。
① 試験施工の実施
この仕上塗材を除去するにあたり、「建築物の改修・解体における石綿含有建築用仕上塗材からの石綿粉じん飛散防止処理技術指針(以下指針)」に示される石綿除去工法のうち、「剥離剤併用手工具工法」と「集じん装置付きディスクグラインダーケレン工法」の2工法について、試験施工を実施しました。その結果、剥離材による工法では石綿の残留が確認され、剥離剤併用手工具工法では石綿を完全に除去することができませんでした。一方、集じん装置付きディスクグラインダーケレン工法については石綿を完全に除去することができたため、当工事では、集じん装置付きディスクグラインダーケレン工法を採用しました(写真-2)。
写真-2 石綿含有建築用仕上塗材の除去状況
②集じん装置付きディスクグラインダーケレン工法による除去
本工法は、負圧隔離および密閉養生は不要のためエアーシャワーおよび負圧集じん機は設置しませんでしたが、除去壁面以外の壁・床・窓および作業足場については石綿や汚れの付着を防ぐ ため、プラスチックシートによる養生を行いました。また、作業員の衛生面を考慮して防護マスクおよび防護服を着用して施工しました。外壁および内壁の19,662.6㎡の石綿含有建築用仕上塗材の除去を約3ヵ月の期間で実施しました。作業期間中に敷地境界のアスベスト測定や作業環境測定も実施し、問題ありませんでした。
清掃工場本体の解体は、内部の分別解体を実施後、騒音および粉じん飛散の低減、さらにダイオキシン類の飛散防止のために超大型仮設テントを設置して、建屋および大型プラント設備等の重機解体を行いました。
① 付属施設等の先行解体と内装解体
工場棟解体用の仮設テントを設置するために障害となる工場棟周囲の既存施設の付属施設、プラットホームおよび管理棟の先行解体を行いました。
② 仮設テントの設置
先行解体の後、工場棟全覆い仮設テント組立は一期、二期施工に分けて実施しました。まず一期施工は工場棟全体を覆う形で設置し、二期施工は煙突をGL+34mまで解体した後、GL+34m以下を覆う形で増設しました。
工場棟全覆い仮設テントの大きさは図-1に示すように、サッカー場を覆う広さの超大型テント(縦77.3m×横120.8m×高さ45.9m)(写真-3)となりました。
テントフレーム地組および組立は、敷地南側に施工ヤードを設け、地組架台および屋根組立時に使用する屋根受架台を設置して行いました(写真-4)。
図-1 仮設テントの大きさ
写真-3 仮設テントの完成全景1
写真-4 仮設テントの組立状況
③ 超大型建物解体専用機による解体
超大型仮設テント内での解体は、200t級超大型建物解体専用機(写真-5)で解体しています。仮設テントは、防音シートと防音パネルの二重の防音対策を講じています(図-2)。粉じんについては、大型テント内を常時負圧に保ち、粉じんがテント外に漏れないように、かつ粉じんがテント内に充満しないように負圧集じん機で換気を行いながら解体を行っています。テントの天井には散水設備を備え、解体箇所に合わせて散水を天井より行っています。このような対策により敷地境界で常時測定している騒音は、70dB程度で基準値(85dB)を下回っていました(モニタリング結果は現場HPで公開 http://hikarigaoka-tatekae.jp/)。
写真-5 200t級超大型建物解体専用機による解体
図-2 仮設テントの断面図
高さ約147mの煙突は2本の内筒が鉄筋コンクリート造の外筒で覆われた構造となっており、内筒は石綿およびダイオキシン類の飛散防止を、外筒は高所から安全に解体できるように、それぞれ考慮した工法により解体しました。
① 内筒解体
内筒は図-3の煙突断面に示すように3層構造になっています。内側からステンレス内筒、石綿含有建材である断熱材、鋼製内筒で構成され、内側から順に解体を行いました。
内筒解体時は周辺環境に配慮し、煙突頂部および外筒下部を密閉養生し、負圧管理を行うことで石綿とダイオキシン類の飛散防止および作業員へのばく露対策を行いました。
内筒の解体は、内筒内部に設置したゴンドラ(図-4)より、上部から短冊状に溶断し、内筒下部の開口部まで吊り降ろすことで順次解体を行いました。断熱材についてはゴンドラ上より散水による石綿飛散防止対策を行いながら、ブレーカーにより解体を行いました。
図-3 煙突断面
図-4 内筒解体状況
② 外筒解体
高さ147mの外筒は、地上から重機解体が可能となる既存施設と同程度の高さGL+34mまでワイヤーソー切断による解体を行い、GL+34m以下は工場棟と同様に全覆い仮設テントを増設し、大型重機による解体を行いました。
解体は、移動式昇降足場(写真-6)およびタワークレーン設置後、外筒を4台のワイヤーソー(写真-7)により短冊状に切断(高さ2.4m、重量約8t)し煙突内部に吊り降ろしました(写真-8)。その後、次の切断高さまで移動式昇降足場のステージダウンを行い同様の作業を繰り返しました。
ワイヤーソー切断によりGL+34mまで解体された後、工場棟テントと一体となるように増設テントを設置し、引き続き大型重機で解体しました。この一体となった全覆い仮設テントは、内部容積約43万㎥を有する世界最大の仮設テント(写真-9)となっています(8ページにて詳述)。
写真-6 移動式足場
写真-7 煙突ワイヤーソー切断状況(地上127m)
写真-8 煙突切断コンクリート吊下し状況(地上127m)
写真-9 増設テント完成
清掃工場の地下部の解体と新設工場の地下部の建設を併行することにより工期を短縮し、解体は完了しました。現在は、平成33年3月の完成を目指し、本格的な建築工事を行っています。
工事名称 | 光が丘清掃工場建替工事(解体) |
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工事場所 | 東京都練馬区光が丘五丁目3番1号 |
発注 | 東京二十三区清掃一部事務組合 |
施工 | タクマ・鴻池特定建設工事共同企業体 |
工期 | 平成28年6月~平成30年12月(解体) |
工事概要 | 解体施設
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