技術広報誌ET

技術広報誌ET 2018年発刊号

運搬中の生コン性状を確認できる
『プローブシステム』を適用

491号(2018年10月01日) 土浦労働総合庁舎 東京本店 工事事務所 小松 正明 / 技術研究所 住 学

はじめに

現在、土浦労働基準監督署などは土浦市中央2丁目に位置する施設にありますが、施設の老朽化や拡充のため、土浦労働総合庁舎として、同市宍塚塚田1838ほかに建設中です。建物規模は、RC造5階、延べ床約3600㎡で、附属施設として車庫(木造平屋約80㎡)や自転車置き場(木造平屋約40㎡)などを整備します(図-1)。

ここではコンクリート工事において、レディーミクストコンクリート(以下、生コン)のフレッシュ性状を、試料採取することなくドラム内に積載した状態で随時確認することができる『プローブシステム』の適用事例について紹介します。

図-1 完成予想図

図-1 完成予想図

プローブシステムの概要

プローブシステムは、ひずみ計および温度計が内蔵されたプローブ(写真-1)をアジテータ車ドラム内に取り付け、ドラムの回転に伴い生コンを通過する際のプローブへの圧力からスランプやコンクリート温度を測定するものです。

通常、生コンの品質管理は、工場から出荷された生コンを現場到着後に、仕様書等で定められた頻度で抜き取り検査を実施し、車両単位でスランプなどのフレッシュ性状を確認しています。

一方、当システムでは、生コン試料を採取することなくドラム内に積載した状態で、随時フレッシュ性状を確認することができ、全量管理が可能となります。待機中のスランプロスが把握できるため、打込み中の不具合を未然に防ぐことができます。

写真-1 プローブ

写真-1 プローブ

-プローブとシステム構成-
プローブは先端からコネクター部まで全長420mm、ひずみ計が内蔵された棒状部分は直径43mmのステンレス製です。システムは写真-2に示すように、プローブ、レシーバ(データの記録保存、兼表示装置)、ソーラーパネルから構成されています。

プローブの設置位置(ドラム点検口に取り付け)、レシーバ、ソーラーパネル

-測定原理-
プローブは、アジテータ車の点検口を利用してドラム中心に向かって内壁に垂直に設置され、ドラムの回転とともに360°回転する構造です。スランプの推定は、プローブがコンクリートに接触する際に生じる圧力(プローブ圧力)とスランプ値の関係から作成したキャリブレーションテーブル(図-2)を用いて行います。コンクリート温度はプローブのハブに内蔵された熱電対により測定されます。

プローブの設置位置(ドラム点検口に取り付け)、レシーバ、ソーラーパネル

ドラム内設置状況
写真-2 システム構成

レシーバ拡大

図-2 キャリブレーションテーブル(例)

図-2 キャリブレーションテーブル(例)

適用状況

本工事では、上部躯体工事全体にプローブシステムを適用しています。生コン工場は1工場に限定し、使用するアジテータ車10台全てに設置しました。

フレッシュ性状のデータ管理グラフを図-3に示します。通常の品質管理検査で採取した試料による実測値(赤マーカー)とプローブシステムによるスランプの値は精度よく一致しており、安定したフレッシュ性状が確保されていることを確認しています。

本工事では、プローブシステムの適用に加えて、RI(中性子線、γ線の透過量を測定)による連続単位水量測定(写真-3)も実施しており、それぞれのデータを生コン工場へフィードバックすることで安定したフレッシュ性状が確保され、結果として高品質な躯体構築の一助になったものと考えます。

図-3 フレッシュ性状のデータ管理

図-3 フレッシュ性状のデータ管理

写真-3 RI法による連続単位水量測定

写真-3 RI法による連続単位水量測定

おわりに

当社では、より高品質な躯体構築へ向けて、プローブシステムを積極的に適用していく予定です。
なお、プローブシステムは、次世代型モデルへと改良を進めており、GPS車両管理システムと統合して、生コンの品質管理情報をリアルタイムに取得できるようになる予定です。

工事概要

工事名称 土浦労働総合庁舎(16)建築工事
工事場所 茨城県土浦市宍塚塚田
発注 国土交通省関東地方整備局
設計 (株)梓設計
監理 国土交通省関東地方整備局宇都宮営繕事務所
(株)本澤建築設計事務所
施工 (株)鴻池組
工期 平成29年2月~平成31年9月(予定)
主要用途 庁舎
構造・規模 RC造 地上5階
建築面積 888.19㎡
延床面積 3,641.42㎡

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491号(2018年10月01日)

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