彦根市は、琵琶湖と鈴鹿山系に囲まれ豊かな自然に恵まれ、中世から近世にかけての貴重な歴史遺産が数多く残る街です。当センターは、環境への配慮、防災拠点としての機能、市民の憩いの場としての機能を併せ持つなど、スポーツ利用者のみならず子供から大人までが気軽に訪れ、交流が図れるような”スポーツを通じた健康複合施設”を目指して建設中です(写真-1)。
施設はスポーツ棟とまちなか交流棟から構成され、スポーツ棟にはメインアリーナ、サブアリーナおよび弓道場などが配置され、まちなか交流棟には多目的ホール、まちなか交流ラウンジおよび図書・学習ラウンジなどが配置されています(図-1)。
ここでは、敷地を活用したサイトPCa工法による鉄筋コンクリート躯体工事の省力化を中心に紹介します。
写真-1 上空からみた施工状況
図-1 鳥瞰パース
スポーツ棟メインアリーナの大屋根(最大スパン65.7m)は、2方向に曲率を有する屋根形状を2方向トラスにより形成、トラスの下弦材および上弦材はH形鋼、斜材は鋼管から構成されています(図-2)。トラスは地上ヤードを利用して組み立て、工区分割に従って所定の位置に取り付けます(写真-2)。
また、RC造の躯体工事に当たっては施工の精度や難易度を考慮して、一部の基礎や座屈拘束ブレースが取り付く大梁を地上ヤードで製作する、サイトPCa工法を採用しました。なお、スタンドの段床は形状が複雑でスリーブ等の打ち込み物があるため、工場製作のPCa部材としました。
図-2 メインアリーナの屋根トラス鉄骨
写真-2 取付前のトラス鉄骨
サイトPCa大梁は、座屈拘束ブレースが取り付く2FLレベルの大梁22本です(図-3)。M30のアンカーボルト64本が梁内部に定着し、座屈拘束ブレースを支える構造となっています(図-4)。在来工法でこれだけ密なアンカーボルトを高所で安全に精度良く配置することは困難であると判断し、地上でボルト設置、配筋、型枠組立などが行えるサイトPCa工法を採用することとしました。
<製作・取付手順>
以下の手順を繰り返すことで、難しいと考えられたアンカーボルトの設置を精度良く安全に行え、後続の鉄骨建方作業への影響を無くし、躯体工事の省力化にも貢献しました。
①アンカーボルトの設置(写真-3)
鋼製治具による正確な位置出し
②梁主筋・スターラップの配筋(写真-4)
③型枠組立
④コンクリート打設
⑤強度確認・脱型
脱型時12N/㎟、吊り上げ時24N/㎟
⑥壁とのジョイント筋(タフネジバー)の取付
大梁下面にネジ鉄筋を専用トルクレンチで取付
⑦PCa大梁の据付(写真-5)
⑧両端の在来工法部分の施工(写真-6)
図-3 PCa化部位
写真-3 アンカーボルトの設置状況
写真-4 配筋後の大梁
写真-5 据付前のPCa大梁
図-4 座屈拘束ブレースの取り付き状況(BIMによる検討)
写真-6 在来工法部分の施工状況
形状が複雑(L型、T型など)で総部材数が多い(96ピース)スタンドの段床部には、工場製作のPCa部材を採用しました(写真-7)。
写真-7 PCa段床を設置したスタンド
2022年3月末現在、工事は終盤となり、外部足場の解体、内装工事などを行っています。6月の竣工に向け、今後も安全第一に工事を進めてまいります。
工事名称 | (仮称)彦根市新市民体育センター建設工事(建築工事) |
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工事場所 | 滋賀県彦根市小泉町福滿640番地 |
発注 | 彦根市 |
設 計・監 理 | (株)石本建築事務所 |
施工 | (株)鴻池組 |
工期 | 2020年4月~2022年6月 |
用途 | 体育館、集会所 |
構 造・規 模 | RC造+S造 地上3階 建築面積9,992.67㎡ 延床面積13,776.01㎡ |