技術広報誌ET

技術広報誌ET 2020年発刊号

計測・誘導機能を集約した
杭施工管理自動化システム『杭打キングPLUS』の開発

496号(2020年1月1日) 大阪本店 建築技術部 正垣 綱之

はじめに

杭工事は、施工後の出来形確認や不具合の修正が難しいことから、徹底した施工精度の確保や工事記録の作成が不可欠であることに加え、逼迫する労働力不足を補うため、省力化工法の導入等による生産性向上が求められています。当社ではこのような状況を受け、カメラ付き自動追尾型トータルステーションを活用した新たな杭施工管理自動化システム『杭打キングPLUS』を開発しました(写真-1)。
当システムは、従来の杭施工管理システムとは異なり、「杭芯計測」「杭計測(水平・傾き)」「杭打機誘導」「杭深度計測」等の機能を一つのシステムに集約しています。さらに従来のシステムでは対応できなかった削孔時からの計測管理を可能にしました。

※ 株式会社きんそく(京都市、社長 奥野勝司)との共同開発

写真-1 開発システムによる計測状況

写真-1 開発システムによる計測状況

システムの機能

➀杭芯計測

タブレット上で管理対象の杭番号を選択することで、事前に入力した杭芯の設計座標に向かってトータルステーションが自動で旋回します。タブレットに表示されたカメラ画像を確認しながら、プリズムを用いて杭芯を一人で計測することが可能です。

➁杭計測

「杭番号」「施工工程」「計測モード」について、それぞれ選択することにより施工精度の自動計測を開始します(図-1、2)。従来のレーザー光照射に加え、カメラ画像によるエッジ検出を用いて杭の水平位置および傾きを計測することで、計測時間を大幅に短縮します(図-3)。

図-1 杭計測時の画面

図-1 杭計測時の画面

図-2 カメラ画像の画面

図-2 カメラ画像の画面

図-3 カメラ画像による杭のエッジ検出

図-3 カメラ画像による杭のエッジ検出

➂杭打機誘導

トータルステーション内蔵カメラで杭打機リーダー上部をターゲットとして追尾計測し、目的の杭位置までの距離・方向を表示して誘導します。目的地までの距離に応じて「遠距離誘導」「近距離誘導」のモード選択が可能です。

➃杭深度計測

削孔時および杭埋設時、杭打機に設置したマーカーのレベル測定を行うことで、事前に入力した先端までの距離情報を基に深度を計測します。

おわりに

今回開発したシステムは、既製杭向けの施工管理システムではありますが、鋼管杭や地盤改良杭への適用も可能です。今後は当システムを実際の杭施工管理業務において、試験的に導入することで精度検証および動作確認を行い、本運用に移行していく予定です(特許出願中)。

496号(2020年1月1日)の記事

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