地質を読む ―工事の安心・安全のために―

技術研究所 高馬 崇 

はじめに

日本列島は大陸のプレートの下に海洋プレートが沈み込む場所に位置し、火山活動や地震などの大きな地殻変動を経ており地質構造は非常に複雑です。そのため、地盤を地質工学的観点から観察・分析・解析・考察し、その結果を現場にフィードバックすることは、我が国の複雑な地質構造上に構造物を安心・安全に建設するために重要となります。

 

「地形上の地質」を読む

地形図や空中写真を観察すると、線状の特徴的な地形(谷や沢筋など)が見られることがあります。これは、断層などの脆弱部が風化して地形に現れたもので、リニアメント(地形の線状構造)と呼ばれ、断層の位置情報として地質解析に有用な情報となります。

 

「コア・露頭の地質」を読む

調査ボーリングのコアデータや切羽(トンネル先端の掘削面)、切土法面などは、詳細な地質情報が得られる貴重な露頭(地層・岩石が表面に露出している場所)です。切羽や切土法面のように短時間で見えなくなる露頭の地質情報を迅速に収集・整理し、地質解析に活用します(図-1)。

 

「試験・分析結果の地質」を読む

 「岩石強度などの物性値」「岩石中の鉱物組成や化学組成」「粘土の膨潤性有無」など、コアや露頭の目視観察だけでは把握できない地質情報が多くあります。そのため、岩石試験による物性値の把握、岩石薄片の偏光顕微鏡観察やX線回折装置による岩石に含まれる鉱物の同定(図-2)、電子顕微鏡や化学組成分析装置による岩石の化学組成分析などを行い、これらの情報を総合的に評価して地質特性を判断します。

 

地質構造を理解する -三次元地質モデルの活用-

これら様々な地質情報を解析して地山全体の地質構造を推定するとともに、工事に影響を及ぼす地質工学的課題を抽出し、解決策を現場に提供します。
また、推定した地山の地質構造を立体的にわかりやすく把握できるように三次元地質モデルを作成し、トンネルにおける前方予測や長大法面の挙動予測などに活用しています(図-3)。
 

  

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479号(2015年10月01日)