建築工事現場におけるスマートデバイスの活用事例

ICTを活用した工事管理   

東京本店 建築部 波多野 純
本社 情報システム部 岩永 和之 

はじめに

当社では電子手帳やPDA端末を使用した仕上げ検査システムを開発・運用した実績があります。そのノウハウを生かして高機能かつ携帯性に優れたスマートデバイスを工事現場で活用するべく、2012年より検討を開始しました。その結果、図面共有と検査機能を持つ「KOCo (ココ)チェック」(KONOIKE Construction Smart Check System)をICT企業((株)レゴリス)と共同開発しました。2013年10月より東京、大阪を中心に30を越える建築工事現場に導入し、システムの改善や機能の追加を進めています。ここでは、システムの概要と現場での活用事例を紹介します。
  

システム概要

 当システムの概要を以下に示します(図-1)。
○ハードウエア
 ・スマートデバイスとしてタブレット端末を採用
 ・機種はアップル社製iPad AirまたはiPad miniのWi-Fi+Cellularモデル
○ソフトウエア
 ・KOCoチェックシステム
 ・主要機能…標準検査(検査メモ記録)、配筋検査、仕上げ検査、図面共有、資料閲覧
○通信・セキュリティ
 ・端末毎にLTEデータ通信サービスに加入
 ・セキュリティ対策としてMDMサービスに加入

 

各機能の活用事例

システム概要に示した主要機能別に、導入現場での活用事例を紹介します。
①標準検査 <事例:高層マンション、東京都>
日々行われる現場内の安全・品質巡視点検等に活用しています。現場巡視時に気づいたことを登録された図面上にiPadでメモとして記録し、必要に応じて状況写真を撮影します。データをクラウドサーバーにアップすることにより指示書(PDF)が作成され、現場職員に周知しています(図-2)。また、毎日行われる定時打ち合わせ時の安全指示に使用することで、具体的な指示ができるようになりました。

 

 

 

④図面共有 <事例:ごみ焼却施設、大阪府>
設備工事の協力会社にデバイスおよび当システムを貸与し、使用してもらうことで建築工事と設備工事との情報共有を試験的に行っています。設備工事担当者が出図や登録作業を行うことなく、最新の建築図面(躯体図等)を閲覧できる一方、建築工事担当者も設備図(総合プロット図等)を閲覧できることから、相互にメリットがあります。

⑤資料閲覧
設計図書および各種品質資料等を資料閲覧システムに登録し、現場で必要に応じて閲覧、活用しています。現場へ多くの図面(紙ベース)を携行する負担が軽減されるとともに、必要な時にその場で技術資料がみられるなど、品質確保、作業効率の向上に寄与しています。

 

現場アンケートにみる業務の変化

導入から約半年経過した時点で、現場職員に対してアンケート調査を実施しました。従来の業務方法と比較してKOCoチェックによる業務の変化(向上度)を聞いたところ、1.0(現状通り)から2.0(2倍)間の回答が多く、業務の効率化や品質の向上に役立っていることがわかりました。なお、一部については1.0を下回る回答もあることから、導入教育や更なるシステム改善を進める予定です(図-5)。

 

施工サイクルとスマートデバイスの活用シーン

前述のKOCoチェックの機能だけでなく、スマートデバイスが持つ様々な機能を活用することが、工事管理の変革につながると考えられます。1日の施工サイクルの中でどのような使い方があるのか、そのために必要なアプリケーションは何かなど、継続してワーキンググループで検討を進めています(図-6)。
音声入力やウェラブル端末などの実務適用も近い将来可能になると考えられ、ICT活用による業務の効率化や品質管理の高度化をさらに進める予定です。
 

 

本誌掲載記事に関するお問い合わせは、経営管理本部 経営企画部CSR・広報課までお願いします。なお、記事の無断転載はご遠慮ください。     

476号(2015年01月01日)