ジオファイバー工法 -史跡古墳の復元と現代に造られた墓地の保全-
大阪本店 工事事務所 北村 徹二/上村 浩二
はじめに
恵解山古墳(いげのやまこふん)は5世紀中頃に造られ、その後、古墳の上に地域の人々が造った墓地とともに大切に守られ、約1600年経った現在まで残されてきた史跡古墳です。今回の古墳整備工事では墓地の保全と前方後円墳の形状を確保しながら古墳を復元するために、急勾配で周囲の景観に調和した擁壁が必要となりました。この擁壁の施工に採用したジオファイバー工法について紹介します。
古墳整備における急傾斜部の擁壁造成
当工事では、古墳の上方にある墓地使用部を確保しながら、下段を過去の古墳形状に修復するために法面を急勾配傾斜にする必要がありました。
古墳整備における急傾斜斜面を維持できると同時に、法面の緑化が可能な工法としてジオファイバー工法を選定しました(写真-1)。
![]() 写真‐1 恵解山古墳の全景 ※長岡京市による撮影 |
施工手順は、①急斜面掘削→②プレート付アンカー打設→③裏面排水材設置→④連続繊維補強土造成(吹付)→⑤ラス金網張り→⑥植生基材吹付、となります。もたれ擁壁の形状で、繊維と砂を混合して噴射することより擁壁を造成する工法です。主な特長として、以下が挙げられます(写真-2)。
○ 抑制工のほか地山補強とともに環境保全対策が可能
○ 樹林化はもとより、既存高木をそのまま生かすことが可能
○ 従来のブロック積み擁壁や吹付枠などと同等の効果を発揮
![]() プレート付アンカー打設・裏面排水材設置 |
![]() 連続繊維補強土造成 |
![]() 植生基材吹付 |
|
写真‐2 施工手順
おわりに
史跡古墳の整備工事にジオファイバー工法を採用したことで、史跡としての古墳の趣きを壊すことなく急勾配ながら既存の法面と調和した擁壁の施工ができ、現在ではその付近に自生していたヨモギが根付き緑化しています。貴重な文化遺産が古墳公園として保存され、長岡京市民に末永く親しまれる場所となることを願っています。
工事名称 | 恵解山古墳保存整備工事その2 |
---|---|
工事場所 | 長岡京市勝竜寺・久貝2丁目地内 |
発注 | 長岡京市 |
工事監理 |
長岡京市 公園緑地課 |
施工 | 鴻池・山品特定建設工事共同企業体 |
工期 |
平成24年9月~平成26年3月 |
構造・規模 |
古墳保存整備 |
本誌掲載記事に関するお問い合わせは、経営管理本部 経営企画部CSR・広報課までお願いします。なお、記事の無断転載はご遠慮ください。