免震による安心かつ高品質な校舎の設計と施工

日本福祉大学東海キャンパス  

名古屋支店 工事事務所 金尾 弘司
企画営業設計部 加田 文郷 

はじめに

 名古屋駅から電車で17分、東海市の玄関口である名鉄太田川駅西口から徒歩5分の場所に、2015年4月「日本福祉大学東海キャンパス」がオープンします。東海キャンパス建設プロジェクトは、日本福祉大学創立60周年事業の一つとして行われており、同大学としては美浜、半田、名古屋に続く4つ目のキャンパスで、看護学部(認可申請中)・経済学部・国際福祉開発学部の3学部で構成される予定です。
同敷地の駅側隣地には都市計画公園である太田公園(現在工事中)が配置されており、駅から公園の中を通って直接大学に入ることができるレイアウトとなっています(図-1)。キャンパスの基本設計は(株)日本設計が担当され、当社はこれをベースに独自の提案を行うことで設計施工として受注し、現在工事が進められています(写真-1)。ここでは当建物の特徴および採用技術について紹介します。

免震構造

近い将来の発生が懸念されている東海地震や東南海地震などの大地震に備え、当建物には免震構造を採用しています。また津波による浸水等に配慮して、地下1階の柱の上に免震装置を設置する柱頭免震方式が採用されています。装置は建物を支える「積層ゴム」と揺れを収束させる「油圧ダンパー」から構成され、前者には従来の天然ゴム系積層ゴムに加え、ダンパーとしての高い減衰性能を併せ持つ「錫プラグ入り積層ゴム」を併用しています(写真-2、3)。なお、地下の免震層は駐車場として計画されており、積層ゴムは耐火パネルにより保護されます。

  

メンテナンスバルコニー

 外壁のメンテナンスを容易にすることや直射日光を遮蔽することにより空調負荷低減の役割を持たせるために、東西面にバルコニーおよび遮蔽ルーバーを設置しました(図-2)。また、上記効果に加え建物に陰影を与えるなど、外観デザインにも変化を与えています。

鉄骨造を効果的に採用

 工期的に非常に厳しい工事であるため、RC造ではなく、鉄骨(S)造を主体とした上で外周部やコア部分など性能上必要な部分をコンクリートで覆ったSRC造を採用しました(図-3)。鉄骨工事を先行することにより、次工程に早期に着手できるようにしました。

床の振動対策(ハーフPC小梁・TMD)

 日影規制の関係上、階高を低く抑えているため、梁下寸法の確保と床の振動抑制の観点から、小梁についてはハーフPCを採用しました(写真-4)。採用に当たって、施工時の積載荷重や施工方法を確認するために実物大による載荷実験を行い、たわみやクラック発生状況等について検証しました(写真-5)。なお、バルコニー床へのハーフPC採用、一般部床への鉄筋組み込み床板の採用など、全体として型枠工事での木材使用量の低減や工業化部材の採用による工期短縮を図っています。
 また、スパンが長い部分の床の振動対策として、TMD(Tuned Mass Damper)を提案し採用されました。TMDはスラブ下に設置し、床の固有周期を打ち消すように調整することで不快な床振動を低減するものです(写真-6)。

おわりに

お客様が求められる安心で高品質な建物を提供するために、提案・設計段階から設計と現場が一体となって進めてきたプロジェクトも、いよいよ竣工に向けた追い込み段階へと入ってきました。日本福祉大学東海キャンパスが来春に開校し、たくさんの学生が集い、愛されるようになることを願っています。

  

工事概要 
工事名称 日本福祉大学東海キャンパス新築工事
工事場所 愛知県東海市大田町
(知多都市計画事業東海太田川駅周辺土地区画整理事業地内)
発注 学校法人日本福祉大学
設計・監理 (株)鴻池組(基本設計・監修:(株)日本設計)
施工 (株)鴻池組 
工期 平成25年9月~平成26年12月 
構造 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
階数 地下1階 地上6階
面積

建築面積3,758.96m2 延床面積20,048.90m2

 

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475号(2014年10月01日)