歴史的建築物の外観デザインを保った耐震改修
九州支店 工事事務所 宮﨑 信宏
庁舎から図書館へ
福岡県北九州市戸畑区のほぼ中央に位置する『旧戸畑区役所』は、1933年(昭和8年)に戸畑市役所庁舎として建設(当社施工)されました。1963年(昭和38年)から5市合併に伴う初代の北九州市役所本庁舎としての9年間を経て、2006年まで戸畑区役所として使用されました。その後、2011年に図書館への転用が決定され、2012年12月から耐震補強工事に加え、エレベーター設置によるバリアフリー化、広い駐車場の確保など、使い勝手のよい図書館へと再生工事が行われ、2014年3月に『北九州市立戸畑図書館』としてオープンしました。
![]() 改修後の建物外観 |
設計概要
設計はリファイニング建築(再生建築)の提唱者である青木茂氏(青木茂建築工房)および構造設計家の金箱温春氏(金箱構造設計事務所)によるもので、帝冠様式の独特な雰囲気をもつ重厚な外観を保つため、建物の外部には耐震補強部材を設けずに内部の耐震補強部材としてスチール製のアーチフレームが提案されました。
このアーチフレーム工法は、築80年が経過し老朽化が著しい建物においても既存躯体への負担を減らすことができ、基礎・基礎梁の補強やRC耐震壁の増設など他の補強と合わせることで十分な効果を発揮しています。
![]() アーチフレームによる補強 |
施工上の工夫
施工においては、狭い空間での鉄骨建方や老朽化した躯体の補修などに様々な工夫を凝らしました。特に塔屋部の鉄骨工事においては、既存躯体に囲まれた狭いスペースでウインチや様々な工具を活用する建方シミュレーションをした上で、施工に当たりました。
今後、多様化が進むリノベーション工事にこれらの経験を活かしたいと考えています。
![]() 耐震補強工事の状況 |
工事名称 | 旧戸畑区役所庁舎図書館活用耐震改修工事 |
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工事場所 | 福岡県北九州市戸畑区新池一丁目1番1号 |
発注 | 北九州市 |
設計・監理 |
北九州市建築都市局建築部建築課 (株)青木茂建築工房 |
施工 | 鴻池・九鉄 特定建設工事共同企業体 |
工期 |
平成24年12月~平成26年2月 |
工事概要 |
用途:図書館
延床面積:2,889.66m2 |
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