変則的な逆打ち工法による地下躯体の施工

江東区(仮称)シビックセンター   

東京本店 工事事務所 鍋島 謙信 / 建築部 小川 雅史

はじめに

東京都江東区の臨海部に位置する豊洲地区では、オフィスビルや商業施設、高層マンション等の大規模な建設プロジェクトが進められています。一方、急激な人口増が問題化しています。これに対して江東区は、既存文化センターの機能を維持した複合施設を整備することで住民サービスの向上を図ると共に、オリンピックを見据えた豊洲地域の核・玄関口のシンボルとなる建物としたい考えです。
ここでは、当複合施設の地下躯体工事に採用した逆打ち工法を中心に紹介します。 

 

地下工事概要

豊洲地区は大正後期からの埋立事業によって形成された地盤であり、GL-15.0m~20.0m付近まで粘性土を主体とした軟弱な地層(N=0~2)が続いています。建物の掘削深さは、一般部がGL-7.5m(一部10.0m)であり、軟弱な地盤と地下水を考慮してSMW工法(Eco-MW)による山留め壁を構築しました。当建物の前面道路には東京臨海新交通臨海線(通称:ゆりかもめ)が近接しており、橋脚と豊洲駅のエレベーター構造物が協議の対象となりました。FEM解析に基く協議により山留め壁の変位については一律4.0mm以内(ゆりかもめ基準)とすることが要求されたため、当該部分については900φの大口径SMW(芯材H-700×300)を採用して対応しました。 

逆打ち工法の計画

通常の逆打ち工法では、深さ2.5m~3.0m程度1次掘削を行い、掘削底から基準床となるトップスラブ(1階床版)を構築するため、型枠の組立も比較的容易に行うことができます。一方、今回は耐圧盤上で切梁が架設されている中、約7.0mの高さでの作業となるため、綿密な施工計画が必要となりました(図-4)。 

最も考慮した点は、鉄骨・切梁・仮設足場等の干渉の確認です。1階梁鉄骨には吊り型枠兼用の足場(NS工法)を先行取付けし、梁筋まで地組した状態で建方を行いました。立体的な干渉の有無を事前に確認する方法としてBIM(Building Information Modeling)を活用し、3次元にて詳細な干渉チェックを行いました(図-5)。 

その他、外周のRC躯体を支持する方法として、スタッドジベルとSMW芯材を仮設杭として利用する方法や、構真柱廻りのパネルゾーン配筋をスムーズに行うために、梁端部の幅寸法を拡幅する「ステップハンチ配筋」の採用等、当社がこれまでに培ってきた逆打ち工法の要素技術も採り入れながら実施計画を行いました(写真-3、4)。 

 

おわりに

2020年の東京オリンピック選手村(晴海地区)や競技施設群(有明地区)の予定地に隣接した当地(豊洲地区)は、築地市場の移転や再開発事業・交通網の整備等、今後とも様々なプロジェクトが予定されている注目のエリアです。
益々深刻な問題に発展するであろう、技能工不足による工程の遅延対策として今回実施した変則的な逆打ち工法は有効な手段と考えます。今回の貴重な経験をデータとして取りまとめ、今後の類似工事に活用する予定です。 

 

工事概要 
工事名称 江東区(仮称)シビックセンター新築工事 
工事場所  東京都江東区豊洲二丁目2番 
発注  東京都江東区 
設計・監理  (株)日建設計 
施工 鴻池・多田・増 建設共同企業体 
工期

平成24年12月~平成27年3月 

工事概要

構造:鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造(制振構造)
階数:地下1階 地上12階 搭屋1階
建築面積:1,945.37m2

延床面積:15,537.72m2 

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474号(2014年07月01日)