旧ビルの地下躯体を山留めとして利用した地下工事
山上ビル南館
東京本店 工事事務所 石橋 康/建築部 筈井 孝一
はじめに
当工事は既存事務所ビルの建て替え工事で、旧ビルの地下躯体を山留めとして利用した地下工事を行ないました。敷地は秋葉原駅に近い神田川沿いに位置し、地下水位が高く、隣地の建物が近接する状況下での施工となりました。
都市部においては建て替え工事が多くなっていることから、これまでも既存の地下躯体を残して、その内側に新築するケースはありましたが、当工事は以下の点から新たな工夫が求められました。 ①新築躯体は、既存躯体より底が深くなる部分がある。 ②既存躯体が敷地境界まで一杯に配置されており、山留め壁の設置スペースがない。 ③地下水位が新築躯体の底レベルよりも高い。 ここでは、これらの条件に対処すべく計画、実施した地下工事について紹介します。
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![]() 図-1 建物完成予想図 |
地下躯体および敷地の概要
新築建物は地下1階、地上12階で、基礎深さはGL-6,300mmです。これに対して、既存建物は地下2階、地上8階で、最大基礎深さはGL-6,700mmですが、変則的な形状をしており、一部の基礎深さはGL-5,290mmとなっています。これらから、基本的には既存躯体を山留めとして利用しますが、一部は既存躯体を解体し掘削する必要があります。一方、既存躯体が敷地境界一杯に配置されているため、新築用の山留め壁を設置するスペースがありません。
また、敷地は南側が道路に面し、北側は神田川護岸に面しています。東側隣地には当工事の建築主が所有する事務所ビルが隣接し、西側には木造の店舗兼住宅があります。敷地の地下水位はGL-4,200mmで、新築建物の基礎より水位が高く、既存躯体を削孔すると地下水が内部に溢れ出てきます(図-2、3)。
![]() 図-2 基礎配置図(既存・新築) |
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地下工事の概要
旧ビルの地上躯体が解体された後、地下工事は旧ビルの地下躯体が残された状態から以下の手順で行われました(図-4)。
![]() 図-4 工事フロー |
①既存地下躯体の一部解体(1次解体)
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③場所打ち杭工事
場所打ち杭工事は、構台の覆工板を順次取り外しながら実施しました。地下水位が既存躯体の底レベルより高いことから、孔壁崩壊防止のためにコルゲート管を杭孔に立て、地下水位より杭孔内水位を高く保ちながら工事を進めました(図-5、写真-2)。
![]() 図-5 杭工事計画図 |
![]() 写真-2 コルゲート管の設置 |
④山留めおよび止水対策工事
山留め兼止水対策工事として、CJG工法(コラムジェットグラウト)を採用しました。地上から小径の鋼管を地中に差し込み、鋼管を回転させながらセメントミルクを高圧で噴射し、土をセメントミルクの柱列に置換する工法です(図-6、写真-3)。
![]() 図-6 CJG工法計画図 |
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⑤既存地下躯体の解体(2次解体) |
![]() 写真-4 既存地下躯体の解体(2次解体) |
おわりに
3月現在、2次解体工事が終了し新築ビルの基礎躯体を構築中です。今回の山留め・止水対策により、地下工事は順調に進んでいます。既存躯体の新築工事への活用は周辺環境への影響を抑え、廃棄物の発生量を抑制するというメリットから、今後も増えることが予想されます。今回の経験を活かし、より環境に優しい施工法に取り組みたいと考えます。
工事名称 | (仮称)山上ビル南館新築工事 |
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工事場所 | 東京都千代田区神田須田町2-25-10 |
発注 | 山上(株) |
設計・監理 | (株)コスモスイニシア一級建築士事務所 / コスモスデザイン |
施工 | (株)鴻池組 |
工期 |
平成25年10月~平成27年1月 |
工事概要 |
構 造 |
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