軟弱地盤における場所打ち杭孔壁のはらみ防止対策
成田高速線、吉高西高架橋
東京本店 工事事務所
鈴木雅史
はじめに
成田新高速鉄道は成田国際空港と都心を短時間で結ぶことを目的として整備されており、印旛日本医大駅から成田国際空港間約19.1kmが新設区間として工事が行われています。当社JVは印旛沼に隣接する延長865mの高架橋を施工しています(図-1)。
![]() 図-1 施工位置図 |
当工区の地形は印旛沼を中心とした低地面が広がり、支持層である洪積層の上部に軟弱なシルト層、腐食土層が堆積しています。本号では、当現場で施工した軟弱地盤における場所打ち杭(表-1)孔壁のはらみ防止対策を紹介します。
表-1 基礎杭概要 |
場所打ち杭孔壁のはらみ状況
軟弱地盤で最初に打設した場所打ち杭(オールケーシング)では、コンクリート打設天端が所定の高さより低下し、コンクリート打設量は計画に対して 120%となり、場所打ち杭孔壁のはらみが懸念されました。チェックボーリングを行い調査した結果、コンクリートはN値0の非常に軟弱なシルト層で孔壁の はらみが確認されました(図-2)。
![]() 図-2 場所打ち杭のはらみ状況図 |
孔壁のはらみの原因
長尺のオールケーシング工法では、下端よりコンクリートの打設とケーシング引き抜き(定着6m)を孔壁維持を図りながら繰り返し行い、杭を造成します。 今回の場所打ち杭孔壁のはらみはケーシング引き抜き時に軟弱なシルト層部分でコンクリートの側圧が周辺地盤の側圧を上回ったため発生したと考えられます。
孔壁のはらみ防止対策
孔壁のはらみ防止対策として軟弱層の改良なども検討しましたが、工程、コストなどを総合的に評価した結果、同様の事例で実績のあるレゾフォンピア工法(レゾフォンネット)を用いることとしました。
(1)レゾフォンピア工法(レゾフォンネット)の特徴
1. 透水性化学繊維による網状布
材質:ポリエチレン製
形状:1mmメッシュ
強度:縦方向 645N/5cm 横方向 307N/5cm
2. 泥水の置換が容易であり、孔壁のはらみを防ぐことができる。
(2)レゾフォンピア工法の施工仕様
表-2 レゾフォンピア工法 |
レゾフォンピア工法の施工手順(図-3)
- 所定のスペーサーと、ネット取り付け用の追加スペーサーを取り付け。
- ネット取り付けリングをスペーサーに溶接固定。
- 鉄筋籠を水平に設置し、上部よりネットを被せ、最上部は強固に固定(写真-1)。
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鉄筋籠をケーシング内に挿入し、ネットを下方に繰り下げながら取り付け、
最下部は最上部同様に強固に固定(写真-2)。 - 取り付け完了後、ケーシングに接触しないように、鉄筋籠を降下させ、所定の高さに設置。
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![]() 図-3 ネット取付図 |
レゾフォンネットの効果確認
レゾフォンネットを使用した杭を、φ1300-42本、φ1500-30本施工しましたが、コンクリートのロス率(設計量に対する増分)の平均は15%(設計ロス率8%)であり効果が実証されました。
※設計ロス率:積算上見込まれているロス率。
おわりに
本工事で採用した場所打ち杭孔壁のはらみ対策が、今後、軟弱地盤での類似工事の参考になれば幸いです。
工事名称 | 成田高速線、吉高西高架橋 |
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工事場所 | 千葉県印旛郡印旛村吉高地内 |
発注 | 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 |
施工 | 鴻池・本間特定建設工事共同企業体 |
工期 |
平成19年3月~平成21年6月 |
工事内容 |
路盤コンクリート 160m 橋脚 30基 橋台 1基 ラーメン高架橋 2連 単版桁 3連 建設残土撤去工 78,000m3 埋戻し盛土工 71,500m3 |
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