超高層マンション工事でのPCa工法とクレーンの計画

ディーグランセ上町台ハイレジデンス

大阪本店 工事事務所 有川浩二
/ 機材センター 平田 健

はじめに

当建物(ディーグランセ上町台ハイレジデンス)は、住戸数101戸、地上28階の超高層マンションです。敷地は大阪市内の高台、上町台地にあり、いにしえには「難波宮」の宮域内であり(写真-1)、安土桃山時代は大名屋敷が居並ぶ「大阪城」三の丸内という、輝かしい歴史の舞台となった場所です。

建物は柱と梁が外周に配置されたアウトフレーム型で、外壁はタイル貼り仕上げとなっています(写真-2)。高品質な躯体を安定した工期で構築するため、住戸階となる3階より上階はプレキャストコンクリート(PCa)工法を採用しました。また、PCa工法による躯体構築をスムーズに行うため、合理的なタワークレーンの計画を行いましたので、これらについて紹介します。

PCa工法とクレーン配置

躯体のPCa化は、品質向上や工期短縮などのメリットがある反面、生産設備面では揚重部材が在来工法に比べ重くなることから、大型クレーン (200~500tmクラス(※))が必要となります。当工事においては、敷地条件、建物の平面形状などを考慮すると建物内部へのクレーン設置が必要となり、作業半径の均等化による能力クラスの抑制を考えると、建物の中心に設置することがより望ましいことが分かりました。そこで、立体機械駐車設備が組み込 まれる建物中心部のシャフト(吹抜け部)に230tmの能力を持つタワークレーンを配置することにしました(図-1)。

一方、限られた敷地を効率よく用いるため、PCa部材の荷取りや荷捌きなど躯体工事用ヤードを住棟西側に配置し、現場打ちコンクリートとなる内部梁の鉄筋地組ヤードは、住棟南側の各種資材置き場の上にステージを設けることで確保しました(図-1)。また、内部の梁型枠や支保工の荷揚げは、本設のエレベータシャフトにホイストクレーンを設置することで、大型クレーンの作業から分離させました。

タワークレーンの解体

建物の外部にクレーンを設置した場合は、通常クレーン自らがマストなどを解体しながら、地上まで下りてきます。今回は建物中央の吹抜け部に設置した関係上、ブームや運転室の地上までの降下は不可能であり、解体用の新たなクレーンを屋上に設置する必要があります。当初の計画では屋上に設置する解体用クレーンは、120tm→60tm→13tmクラスの3段階で計画していましたが、230tmクレーンを解体する際にブーム全体を本体から切り離すのではなく、先端半分のみを先に切り離すことで、解体用クレーンを60tm→13tmクラスの2段階にすることが可能となりました(図-2、写真-5、6)。

※ 定格荷重(t)×作業半径(m)の略表記

おわりに

PCa工法は、高品質の確保や工期短縮に加え、躯体職の不足への対応など、超高層マンションの施工に欠かせないものとなっています。また、PCa工法を採用するにあたっては、揚重機の設置場所・機種の選定が大きなキーポイントとなります。

今後も顧客ニーズに応えるべく、今回のPCa化の範囲とクレーン計画に関する知見を生かして、厳しい施工条件下での市街地超高層物件の工法改善、改良を進めていきます。

工事概要
工事名称 (仮称)ディーグランセ上町台ハイレジデンス新築工事
工事場所 大阪市中央区内久宝寺町2丁目9番1
発注 大和ハウス工業(株)
設計・監理

意匠・構造 (株)日建ハウジングシステム

設備  (株)鴻池組

施工 (株)鴻池組
工期 平成19年5月~平成21年3月
構造・規模 RC造 地下1階 地上28階 塔屋1階
建築面積884.1m2、延床面積16,227.8m2

本誌掲載記事に関するお問い合わせは、管理本部 広報までお願いします。なお、記事の無断転載はご遠慮ください。

 

452号(2009年03月01日)