埋立地での大断面ボックスカルバート施工

関西国際空港2期

大阪本店 工事事務所
奥田章博

はじめに

関西国際空港2期空港島埋立工事は2期島の造成予定面積545haのうち平成20年12月現在528haが陸化しています。平成19年8月2日に2期滑 走路と南側誘導路を供用開始していますが、残っている北側部分の造成と当社JVが施工する北側アンダーパス(ボックスカルバート)の築造を進めています (写真-1)。

2期空港島でのボックスカルバート築造の特徴

2期空港島海域は海底面に軟弱な粘土層が厚く堆積しているため、現在でも月当たり5~6・沈下し続けています。50年後の沈下予測量18.0mに 対して、現在の沈下量は約11mであるので今後約7.0m沈下することになります。今後の沈下により海水位以下になることから、海水による悪影響を減少さ せる必要があります。

当工事は、こういった地盤の上で全長400m、ベ-ス厚1.5m~2.3m、壁厚1.0m~1.5m、スラブ厚1.5mのマッシブなボックスカル バ-トを構築するため温度ひび割れの発生が懸念され、耐久性を確保するために徹底したひび割れ抑制対策の検討を求められました。

温度応力の事前検討

施工に先立ち、温度ひび割れの対策を選定するため、温度応力解析を実施しました。関空の南側アンダ-パスでの実績などを参考に、目標とするひび割れ指数 および、ひび割れ発生率をそれぞれ20%以下、1.45以上と設定し、打設のロット数と打設個所ごとのセメントの種類について検討しました(表-1、図 -1、2)。検討の結果、CASE-5(打設ロット:ベ-ス、壁、スラブ、セメントの種類:ベ-スが高炉B、壁とスラブは低熱セメント)を採用しました。

養生と温度管理

温度ひび割れの発生メカニズムには、セメントの水和反応により上昇したコンクリ-ト温度が外気温まで低下することにより収縮し、既設コンクリ-トがその 収縮挙動を拘束することから起こる外部拘束型と、コンクリ-トの内部と表面の温度差により、表面の低温部が内部の体積膨脹に引っ張られる形になる内部拘束 型があり、それらの対策にはコンクリ-トの温度管理が重要となります。

(1)保温養生

コンクリ-ト打設後にコンクリ-ト表面の急激な水分蒸発と温度変化を防ぐため、図-3に示すよう、ベ-ス、スラブ、壁の天端を養生マットとエア-クッション(梱包用緩衝材)で覆い、さらに養生マットを上に被せた三重構造で養生しました。また、散水養生は打設後3日は十分な散水を行い、それ以降は散水に よる温度低下を防ぐため、養生マットが湿っている程度の湿潤状態を保持しました。

(2)熱電対による温度管理

事前解析の結果、内部拘束によるひび割れ発生を防止するためには、型枠脱型時の内部と表面の温度差を25度以下とする必要がありました。

全部で16あるブロックを打設時期と構造が同様なグル-プに分け、それぞれのグル-プで最初に施工するブロックにベ-ス、壁、スラブそれぞれの躯体内部と表面に温度測定用の熱電対を設置しました。それから得られたデ-タで同一グル-プの養生期間を決定しました。図-6にベ-スコンクリ-トの温度測 定結果の一例を示します。

青のラインが内部、赤のラインが表面温度、黄色のラインが外気温を示しています。平均外気温が13度であるのに対してコンクリ-ト内部温 度は打設後12日で30.9度となり、その差が約18度と25度に対し約7度の余裕があり、温度ひび割れを発生させることなく脱型することが可能となりま す。

本ブロックの後に施工した同一グル-プの脱型時期は、この温度上昇カ-ブと実際の外気温との差で決定しました。

おわりに

これらの養生方法と温度管理の結果、0.2・以上の温度ひび割れは発生しておらず、大規模なコンクリート構造物を築造する際の温度ひび割れ抑制対策として有効でした。

今後、コンクリート構造物の品質管理への要求が高まることから、同種工事における参考になれば幸いです。

工事概要
工事名称 2期空港島埋立工事(造成その10)
工事場所 大阪府泉佐野市空港2期空港場所
発注 関西国際空港用地造成(株)
設計 関西国際空港用地造成(株)
監理 関西国際空港(株) 建設事務所
施工

鴻池・若築・佐藤・フジタ・本間

特定建設工事共同企業体

工期 平成19年3月~平成21年2月
工事内容 コンクリート:32,505m3 鉄筋:4,954.9t
防水シート:23,822m2  可とう継手:15ヵ所

本誌掲載記事に関するお問い合わせは、管理本部 広報までお願いします。なお、記事の無断転載はご遠慮ください。

452号(2009年03月01日)