公共図書館の書架の耐震・ホール音響・熱環境の検討

岡崎市図書館交流プラザ

技術研究所 伊藤真二
/ 名古屋支店 工事事務所 岡本 公

はじめに

平成20年11月にオープン予定の岡崎市図書館交流プラザは、岡崎市の中心部康生地区に位置し、図書館や音楽ホール、スタジオ、会議室などを持つ複合公共施設です。本施設の施工に際し、さまざまな技術的検討を行いましたが、その中から、書架の耐震実験、ホール、スタジオの音響性能評価およびアトリウム空間の熱環境解析について紹介します。

書架の耐震実験

本施設の核となる中央図書館に設置される書架の耐震性能を確認するために、書架を地震波によって加振する振動実験を技術研究所(つくば市)保有の振動台によって行いました。
加振する書架は図書館に設置する書架と同じものを試験体(写真-2)とし、振動台上に設置したコンクリート版に実施工と同じ条件でアンカー固定しまし た。加振する地震波は、兵庫県南部地震時に神戸海洋気象台で観測されたJMA神戸波と東海および東南海地震時に岡崎市において発生すると予測される人工波の2種類としました。
振動実験では、書籍を収納した状態で書架を加振しましたが、床固定部や書架の各部位に損傷は認められず、所定の耐震性能を満足していることが確認できました。

ホール、スタジオの音響性能評価

本施設には、「文化創造」の発信拠点として、可動式の客席292席を備えた多目的ホールと6つの音楽練習スタジオがあります。竣工に先立ち、ホール、スタジオの音響特性が所定の性能を満足しているか否かの確認測定を行いました。
確認測定では、ホールおよび6つのスタジオを対象に遮音性能および残響時間を評価しました。測定の結果、ホールおよびスタジオの遮音性能は目標性能を満 たしていることが確認されました。ホールの残響時間は、空席時0.65秒、満席時0.60秒であり、目標性能(空席時0.67秒、満席時0.63秒)と良い対応をしていることが確認できました。また、幕状態を変更することで、残響時間が0.60~1.40秒に可変可能で、幅広い催し物に対応できることが確認されました。

アトリウムの熱環境解析

本施設には各施設への導入空間として3層吹抜けのアトリウムがあり、情報発信を兼ねたくつろぎの場として位置付けられています。
このアトリウムのトップライトには開口部があります。春、秋の中間期にはこの開口部を開放することによって自然換気を行い、アトリウム内部の温熱環境を 快適にすることができます。アトリウム上部に開口部を設けることによって、実際にアトリウム内の温度分布がどのようになるかをコンピューターシミュレー ションによる熱・流体数値解析によって検討しました。
吹抜けのアトリウム内部、トップライト部およびアトリウムと繋がっている1階、2階および3階の廊下などを解析範囲として3次元の建物モデル(図-2)を作成し、3次元の熱・流体解析を行いました。
解析条件として、気温・風は、気温が高い6月を想定して条件を設定し、熱源としては、人の発熱、照明器具からの発熱、トップライトガラス面からの日射などを考慮しました。
解析の結果、天井付近で日射によって暖められた空気がトップライトの開口から流出することで自然換気が促され、アトリウム内の温熱環境が良好に保たれることが確認されました(図-3)。

おわりに

岡崎市図書交流プラザの施工において、振動台による加振実験、現地の音響測定およびコンピューターシミュレーションによる熱環境解析など、さまざまな技術 的手法で性能評価を行い、耐震性、音響性能および熱環境性能が、所定の性能を満足していることを確認しました。11月のオープン以降、本施設が地域の知的 活動拠点として活用されることが期待されます。

工事概要
工事名称 (仮称)岡崎市図書館交流プラザ建築工事
工事場所 岡崎市康生通地内
発注 岡崎市
設計 佐藤総合・千里建築設計特定設計業務共同企業体
監理

岡崎市

佐藤総合・千里建築設計特定設計業務共同企業体

施工 鴻池・小原・酒部特定建設工事共同企業体
工期 平成18年6月~平成20年3月
構造・規模

RC造、SRC造、S造 地上3階

建築面積 13,504.63m2 延床面積 23,736.79m2

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446号(2008年09月01日)