シアターと公共図書館の遮音

BiVi藤枝

名古屋支店 工事事務所
馬場誠一

はじめに

BiVi藤枝新築工事では、4階に大音量を出すシネコン(複合映画館)、直下の3階には静けさが求められる図書館が設けられています(写真-1)。シアターの映画上映音が下階に伝わり、図書閲覧の妨げにならないよう、従来のシネコンの遮音構造としてはほとんど例のないハイグレードなプロ用のレコーディングスタジオ並みの「完全浮構造」が採用されました。

完全浮構造

7室あるシアターの床構造は、躯体スラブ上に客席部分の固定段床をコンクリート打設し、さらにその上に高性能防振ゴムを配置し、コンクリート浮床を乗せる2重床構造としています(写真-2)。また、シアターの壁や天井も防振ゴムで支持する浮遮音壁・浮遮音天井としています(図-1・写真-3, 写真-4)。

このように、床・壁・天井すべてにおいて、躯体や固定遮音壁・天井との接触点に、適正な荷重をかけた防振ゴムを設けることにより、シアターの大音量の映画上映音を躯体構造に伝えないようにします。
もちろん隣接するシアター間の遮音量も確保するため、間仕切の固定遮音層を先行し、それに接触しないように固定段床を打設しました。これにより、一つ一つのシアターが、高度な遮音構造として望ましい完全な「BOX in BOX」仕様となっています。

さらなる遮音補強検討

映画上映音以外にも、シアターのコリドーを歩く大人数の観客の歩行音(床衝撃音)対策のために、シアター部分の床スラブは厚さ200mm(フラットデッキ)とし、床仕上は、通常よりもクッション性のある厚めのカーペット敷きとしています。また、シアターWCからの排水音が図書館で聞こえないように、配管 経路の検討、配管の遮音被覆などを行っています。さらに、3、4階バルコニーの機械設備は防振架台上に設置し、周りを押出成形セメント板の防音壁で覆いました。
しかし、それでもまだ計算上、上下階の遮音量が目標値に届かないため、図書館の仕上天井内にも浮遮音天井を設けました。これによりシアター・図書館間の直線上には浮床・固定段床・床スラブ・浮遮音天井と、遮音層が合計4層設けられることになりました。

遮音性能

上記のように綿密な遮音検討を行い、事前に監督員、職長をはじめ作業員一人ひとりまで、施工要領を周知徹底し、万全な管理体制で施工されたシアターの遮音性能は、目標性能を大きく上回る結果となりました(表-1)。

おわりに

BiVi藤枝は、大音量を出すシネコンと静けさが求められる図書館が共存する過去にほとんど例をみない商業施設です。オープン以降も「藤枝駅周辺にぎわい再生拠点施設整備事業」の先駆けとして、市民の皆さんに喜んで頂けることを願っています。

工事概要
工事名称 BiVi藤枝新築工事
工事場所 静岡県藤枝市前島1丁目7
発注 大和リース(株)
設計・監理 (株)日本設計
施工 (株)鴻池組
工期 平成20年3月~平成21年2月
用途 複合施設(図書館・物販店舗・シネコン)および立体駐車場
構造・規模 S造:地上5階
建築面積:5,352.02m2(施設棟)
延床面積:18,450.91m2(施設棟)

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453号(2009年04月01日)