ジャンピング工法による125mの煙突施工

住金和歌山新コークス炉

大阪本店 工事事務所
小野田寛二

はじめに

本工事は、住友金属工業(株)和歌山製鉄所における新高炉建設プロジェクトに伴う、新コークス炉建設工事のうち、当社の施工範囲としてI-B炉とその周辺設備を建設する工事です。その工事の一環として、I-B炉の付帯設備である地上125mの煙突を構築しました。本号では、煙突の外筒工事の施工方法として採用した、ジャンピング工法について紹介します。

ジャンピング工法

煙突の外筒はRC造で、最下部の直径が9,800mm(壁厚500mm)、最上部の直径が6,500mm(壁厚250mm)と上部に行くほど直径が小さく、壁厚も薄くなっていく構造をしています(図-1)。煙突外筒の施工は、1段を1.8mに設定し71段に分割して行いました。ジャンピング工法とは、3段分の型枠(メタルフォーム)、足場材を使用し、3段のうちの最下段の資材を上部の施工個所に盛り替えて転用しながら、2段(3.6m)ごとにコンクリートの打設を繰り返し、上部へと進んで行く工法です。

施工フロー(図-2)に示すように、前段のコンクリート打設完了後、1段目の鉄筋の組み立てを行います。鉄筋の組み立て完了後、最下段の型枠を解体し、型枠パネルを人力にて最上段の作業床上に引き上げて、1段目の型枠の組み立て、固定を行います。型枠の固定後、下部の足場を上部に盛り替え、煙突外部の吊り足場をチルホールにて引き上げます。これらの作業をもう一度繰り返し、2段目の鉄筋の組み立て、型枠および足場の盛り替えを行い、完了後、2段分のコンクリートを同時に打設します(図-3)。この施工の流れが、ジャンピング工法の1サイクルとなります。
このジャンピング工法に付随する仮設備として、煙突外部足場に使用したジャンピング足場は、上、中、下段の3段構造で、上、中段は鋼製型枠に設置し、下段は吊り足場になっています。中段の作業床を上部の施工個所に盛り替え、吊り足場を引き上げるという単純作業の繰り返しで足場の設置を行うことができるので、揚重作業などの危険作業を減らすことができます。また、資材も少なく、構造も単純で安全です。落下防止対策としては、メッシュシートを外側の全面に設 置しました(写真-1)。
煙突内部足場としては、GL+14.9mまでは枠組足場および単管足場を使用し、その後は、センターポストを軸として電動シリンダにより上下移動するステージ上に、枠組足場を組み立てたクライミング足場を使用しました(図-4)。枠組足場、単管足場のように地上から組み上げる必要がなくなり、必要資材も 少なく、ステージ上の枠組足場の組み立て解体の手間も最初と最後の各一回で済み、経済的にも数々のメリットがあります。
また、揚重機械としては、クライミングクレーン(2.8t吊)を使用しました。当工事で使用したクライミングクレーンは、一般のタワークレーンのように 地上の架台基礎上にマストを建てるタイプとは異なり、打設したコンクリート面にアンカーを取り、煙突外筒の躯体面に沿ってレールを設置し、クレーン本体が 自走式に上下移動するクレーンです(写真-2、3)。架台基礎を設置する必要がないため、作業スペースの狭かった当工事でも、非常に効率的に煙突周辺の空間を利用することができました。

 

おわりに

ジャンピング工法では、型枠パネルをコンクリート面から脱型した後、その型枠パネルを上部の型枠パネルとして転用するため、型枠パネルの盛り替え作業は、全体工程の中でクリティカルな工程となります。型枠パネルは、1段あたり約200~350枚あり、脱型後から次スパンのコンクリート打設までに、清掃、ケレン、補修、建て込み調整などの人力作業が必要なため、多くの時間と労力を要し、型枠パネルを上方に滑動させながらコンクリートを連続的に打設していくスライド工法と比べ、工期を短縮するのは難しいところです。しかしながら、養生期間を置いてから、型枠パネルを順次上方へ盛り替えながらコンクリートを打設していくため、コンクリート面の仕上がりは良好となり、また、仮設備も安価で、品質面、経済面においては利点のある工法です。
煙突本体工事については、平成19年12月に着手し、煙突外筒の躯体コンクリート工事、内筒工事および設備工事、外壁塗装などを順次施工し、平成20年12月に完成しました(写真-4)。コークス炉建設工事全体としては平成21年7月31日に完了し無事竣工を迎えることができました。当工事の施工実績が 今後の同種工事での参考になれば幸いです。

工事概要
工事名称 新コークス炉土木建築工事(F・G工区)
工事場所 和歌山県和歌山市湊 住友金属工業(株)和歌山製鉄所内
発注 住友金属工業(株)
施工 (株)鴻池組
工期 平成18年4月~平成21年7月(全体)
工事内容

煙突工事 H=125m

  • 外筒 RC造、下部φ9,800(壁厚500mm)~上部φ6,500(壁厚250mm)
  • 内筒 φ4,100、一般部:耐硫酸露点腐食鋼(t=9mm)、頂部:SUS316L(t=6mm)
  • 掘削 5,600m3 ・コンクリート 2,500m3 ・型枠 6,200m2
  • 鋼矢板 FSPIV型 4,000延m
  • 場所打ち杭 φ1,500 L=29.7m 28本

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455号(2009年10月01日)