近未来型の堂内墓苑を有する門信徒会館

東本願寺門信徒会館『慈光殿』

東京本店 建築設計部
三村和生

はじめに

東本願寺は、東京メトロ銀座線「田原町」駅から徒歩5分の地にあり、厨房用品や道具を販売する日本一の問屋街である「かっぱ橋道具街」に隣接していま す。こうした商業地区にありながら、お寺の境内に一歩足を踏み入れると、そこに流れる空気は凛としていて背筋が伸びるような雰囲気を感じます。東本願寺の歴史は、1591年教如上人が江戸神田に江戸御坊光瑞寺を開創したことが始まりと言われています。明暦の大火(1657年)以降、現在地の浅草に移転しま した。
元は真宗大谷派東京別院であり、「浅草本願寺」や「東京本願寺」と称していましたが、真宗大谷派から独立し、のちに「浄土真宗東本願寺派 本山 東本願寺」と名称が変更されました。一般には「浅草の門跡様」として親しまれています(図-1、写真-1)。東本願寺では平成23年に、「親鸞聖人七百五 十回御遠忌(ごえんき)」が厳修されます。この御遠忌法要は、浄土真宗の宗祖、親鸞聖人(1173~1262)がお亡くなりになられてから50年ごとに営まれる、浄土真宗最大かつ最も意義深い法要です。「門信徒会館」は当御遠忌の記念事業として、ご門徒や一般の方々、地域の人々にもさまざまな形で貢献できる施設を目指し、境内に建立されることとなりました。なお、「門信徒会館」の正式名称は『慈光殿』に決定しました(図-2)。

外観について

建物は地下1階・地上5階建てです。外観を特徴づけているのは(1)外壁色と(2)5階の鐘楼と言えます。

(1)外壁色

建物構成は主用途としてラウンジ、ホール以外に堂内墓があります。 ≪元に戻る≫→≪自然に帰る≫をイメージし『木の皮を剥いた時に遭遇する色』を外壁色に採用しました。

 

(2)鐘楼

柱スパン5mで屋根は準本瓦葺き。屋根の上には相輪も備わり、鐘楼床面からの高さは12mにもなります。梵鐘(ぼんしょう)は解体された浄華堂(納骨堂)(写真-3、4)の最上階に 設置されていたものを移設します。この梵鐘は寛永7(1630)年に鋳造されたもので、直径約1.7m、高さ約2.3m、重量約9tもあり、台東区の有形文化財に指定されています。一般に公開されるのは大晦日だけで、予約申込をすると鐘を突くこともできます。

建物機能について

建物の機能について紹介したいことは、 解体された『大谷ホール』(写真-2)が担っていた機能を引き継ぐ他に、堂内墓を設置していることです。この堂内墓は1・2階と3・4階の2層吹抜けとなっており、約120m2の平面形で、高さ9mにもなります。この空間に25連×20段の立体納骨ラックが6列配列されており、巾71cm×奥行27cm×高さ27cmの納骨厨子(ずし)(7寸サイズの骨壺が3個収納可能)が 3,000基格納可能です。つまり2カ所の堂内墓で6,000基の納骨厨子が格納されることとなります(3・4階は今回実施、1・2階は将来対応)(図-3)。なお、この堂内墓は『浅草浄苑』という名称で呼ばれることになっています。
『浅草浄苑』には自動化納骨厨子システムが採用されています。 このシステムは、コンピュータによって管理制御された立体納骨ラック内の納骨厨子を、 参拝室の各参拝ブースまで自動的に搬送するものです(図-4、5)。

おわりに

この新しい「門信徒会館」は浄土真宗東本願寺派の本山における事業ということもあり、全国の末寺から注目を集めています。現在は仕上工事の最盛期で、11月中旬に引渡し予定です。残り少ない工期ですが、最後まで気を緩めることなく、本山として見本となるような建物を完成すべく努力していきます。

工事概要
工事名称 東本願寺門信徒会館『慈光殿』新築工事
工事場所 東京都台東区西浅草1-5-5
発注 浄土真宗東本願寺派 本山 東本願寺
設計・監理 (株)鴻池組
施工 (株)鴻池組
工期 平成21年1月~平成21年11月
構造・規模

RC造 地上5階 地下1階 
建築面積833.92m2、延床面積2,976.12m2

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455号(2009年10月01日)