ボックスカルバートの頂版PC化による工期短縮

第二京阪道路宮山

大阪本店 工事事務所
西岡 勲

はじめに

第二京阪道路は、「緑立つ道」の愛称で呼ばれ、京都府久御山(くみやま)町(巨椋(おぐら)池IC)から大阪府門真市(近畿自動車道)を結ぶ延長約 26.4kmの道路で、6車線の自動車専用道路、2~4車線の一般道路(京都南道路・大阪北道路)と環境施設帯からなる一般国道1号のバイパスです。平成 15年3月に京都側の巨椋池IC~枚方東IC間の自動車専用道路(10.5km)が開通しました。現在、枚方東IC~近畿自動車道門真JCT(仮称)間の 建設が進められており、枚方東ICに近接する国道307号から約690mが工事区間となっています(図-1、写真-1)。本号ではボックスカルバートの頂 版PC化による工期短縮について紹介します。

ボックスカルバート頂版施工方法の変更

原設計では、ボックスカルバート(幅54.2m、高さ10.4m、全長300m、4連)頂版の施工が現場打ちとなっていましたが、以下のことが問題点として考えられました。

  1. スラブのコンクリート打設量が1ブロック約1000m3(1ブロック延長15m)となり、地元との作業時間の協定(8:00~17:00)を守ることが困難である。
  2. 従来工法の型枠支保工を組み立てると、他工区も含む工事用車両の通行を確保することができず、工程の遅れが生じる。

以上のことを解決するために、頂版の施工に型枠支保工を必要としないプレキャスト部材を使用し、現場打ちコンクリートを打設するスーパーカルバート工法を採用しました。

スーパーカルバート工法について

スーパーカルバート工法は、プレキャスト部材である側壁および頂版を門型に組み立てた後、場所打ちコンクリートを打設してプレキャスト部材と一体化を図る 構造物で、従来のオールプレキャスト製品の工期短縮を継承し、部材自重を軽減することにより、構造物の大型化を可能にした経済的な工法です。当現場では、底版・壁を先行施工していたので、原設計の断面緒元(部材厚、配筋仕様)は変更せず、頂版のみを変更(PC化)しました。なお、頂版形状は、現場打ちコンクリートの量をプレキャスト部材の重量を最も少なくできるT型形状にしました(図-3)。

PC頂版の施工

PC頂版の施工は、壁の施工完了後、80tクローラークレーン(一部120tクローラークレーン)により架設しました(図-4、写真-2、3)。PC頂版据え付け後、鉄筋を組み立てコンクリートを打設しました。壁と頂版の継目部の鉄筋は、機械式継手により組み立てます。

PC化による効果

  1. 工程面は、頂版(全体300m)において、約6カ月の短縮が可能となった(表-1)。
  2. 型枠支保工がないことにより、工事用道路が確保でき、輻輳した場合の作業ヤードの制約が少なくなり、工程調整が容易になるとともに作業効率も良くなった。
  3. コンクリート打設量が少なく(500m3に対し220m3)なり、地元との作業時間協定を守ることができた。
  4. PC部材を使用しているので、表面の仕上がり、見栄えがよく、ひび割れ・はく離等の劣化に対し耐久性があり、高品質であるため将来の維持管理も低減される(写真-5)。
  5. 支保工組立解体作業がないので、高所作業が少なくなり、安全性が良くなった(写真-6)。
  6. 環境面は、労務作業量が減り、騒音、振動等の近隣への影響が少なくなった。また、仮設材の廃材の排出量、CO2排出量を抑制することができた。

おわりに

PC頂版の据え付けは、3月末に完了し、スラブの施工は4月末に完了しました。工事全体としては、12月竣工に向け施工を進めています。 
今回、頂版のPC化により、工程管理が容易となり、円滑に工事を進めることができました。今後、当現場のような市街地で作業時間の制約を受け、隣接工事と 工事用道路を共用するような条件で、大型ボックスカルバートを計画する(施工する)際は、PC化することにより、カルバート本体は在来工法に比べてコストが割高となりますが、総合的には工期短縮によるトータルでの工事費縮減が可能であり、また、環境負荷低減につながると思います。

工事概要
工事名称 第二京阪道路宮山工事
工事場所 大阪府枚方市津田東町3丁目
発注 西日本高速道路(株)関西支社
施工 (株)鴻池組・ベクテル・大鉄工業(株)共同企業体
工期 平成16年3月~平成20年12月
工事内容

切盛土工 602,088m3、擁壁工(逆T、L型)1,364m、

C-BX 300m、共同溝 665m、橋台工 2基、

補強土壁 2,921m2

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443号(2008年06月01日)