電子ビーム圧縮・加速装置を収納するトンネル躯体施工

X線自由電子レーザー施設マシン収納部建屋

大阪本店 工事事務所
鎌田俊二 / 酒井泰一 / 岩永和之

はじめに

X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray Free Electron Laser)は、短い波長と揃った位相という優れた性質を兼ね備えた放射光です。XFELは日本政府から「国家基幹技術」に指定され、国家プロジェクトとして研究開発が進められており、分子レベルの分析研究への利用など、「夢の光」として大きな期待が寄せられています。
兵庫県播磨科学公園都市の大型放射光施設“SPring-8”構内にて建設中のXFEL施設建屋は、マシン収納部建屋、光源収納部建屋、および共同実験棟・共同研究棟から構成され、このうちマシン収納部建屋の建築工事を当社が施工しています(写真-1)。
マシン収納部トンネルはマシン収納部建屋の中核をなす部分で、内部には電子銃や加速管が設置されます。本号ではトンネル躯体の施工について紹介します。

トンネル躯体の特徴

トンネルは、約400m(1スパン7.5m×53スパン)の全長を有し、供用時には、その内部で電子がほぼ光速まで加速されます。断面は底盤厚1.6m、壁厚・上床版厚2mの、放射線遮へい性能を有するマスコンクリートとなっています(図-1)。このような特徴を有するトンネル躯体の温度伸縮等による影響 に対応するため、以下のような点が設計で規定されています。

このような要求を満たすため、壁や上床版躯体は、1スパンおきに躯体施工し、型枠脱型後、その間の躯体を施工する手順としています(写真-3)。
また、装置の土台となるトンネル床に求められている精度は、全長400mにおける許容差目標値が±5mmであり、底盤の沈下防止および床増打コンクリートの表面精度の確保がポイントとなっています。

トンネル躯体コンクリートの調合

トンネル躯体温度収縮の影響を抑えるため、低熱ポルトランドセメントを使用し、粗骨材最大径40mmとする等、単位セメント量を低減する配慮を行っています。当社技術研究所および大阪本店建築部・土木部の支援を受け、温度解析等を行って得られたデータを考慮し、試験練りを重ね調合を決定しました。また、実機試験を行い、輸送に伴う生コンの性状変化の程度やポンプ圧送性を事前に確認しています。

トンネル躯体の工法

  1. 壁配筋の地組工法
    主筋に径32mmの鉄筋を用いるトンネル壁配筋工事においては、鉄骨製の治具を使用して1スパン分(幅7.5m×高さ6.5m)の壁筋を地組みし、これを 治具ごとクレーンで吊り上げて建て込む工法としました(写真-4)。これにより、配筋作業の省力化、配筋精度の均一化、高所作業の低減、足場の低減といった面で合理化につながりました。
  2. 床版型枠支保工
    トンネル上床版の躯体施工に際しては、移動式のシステム支保工を採用し、4セット4~5回の転用を行うことにしています。

おわりに

XFEL計画合同推進本部のサイトで、建設中の現場の様子を写真で見ることができます。

http://www.riken.jp/XFEL/jpn/index.html

工事概要
工事名称 X線自由電子レーザー施設マシン収納部建屋建築工事
工事場所 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
発注 独立行政法人理化学研究所
設計・監理 (株)日建設計
施工 (株)鴻池組
工期 平成19年3月~平成21年3月
構造・規模

RC,S,SRC造 1階

敷地面積 1,410,350.92㎡

建築面積  11,310.00㎡

延床面積  11,251.56㎡

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443号(2008年06月01日)