技術広報誌ET

技術広報誌ET 2019年発刊号

解体工事と同時進行する地下躯体工事

494号(2019年07月01日) 光が丘清掃工場建替工事 東京本店 工事事務所 鍋島 謙信 / 建築技術部 小川 雅史

はじめに

当清掃工場は東京都練馬区の北部に位置し、地域のシンボルでもある光が丘公園や大型ショッピングセンター、総合病院、都営住宅などが敷地周辺にある都市型の清掃工場です。今回の建て替え工事は、1981(S56)年より稼働を開始した旧清掃工場の老朽化に伴うもので、土木および建築工事を担当する㈱鴻池組とプラント工事を担当する㈱タクマとの異業種JVによって進められています。

新清掃工場は、自然エネルギーの積極的利用や高効率の廃棄物発電設備の導入などによりCO₂排出量の削減を図っています。また、焼却過程で発生する余熱を公共施設への供給や地域冷暖房として利用する計画となっています。一方、外観は周辺環境と調和したデザインとし、新工場棟の高さを旧工場棟より低く抑えることで圧迫感を低減しています(図-1)。

巨大仮設テントを用いた旧清掃工場の解体工事の紹介(関連記事ET491号)に続き、今回は一部の解体工事と同時に進めたプレキャストコンクリート(PCa)工法による地下躯体工事について紹介します。

地下工事の概要

新工場の地下躯体工事は旧工場の杭や地下躯体の撤去工事と絡み、様々なステップを踏んで進められます。一例として2019年3月段階のステップ図を図-2に示します。このステップでは、B1~B2階の柱および梁PCa部材の建方と並行して、煙突の基礎・連続杭の解体工事が行われています(写真-1)。

図-1 完成予想図

図-1 完成予想図

写真-1 地価工事状況全景

写真-1 地下工事状況全景

山留め計画

地下掘削の深さは、ごみバンカ部がGL-21.5m、新設の炉室・排ガス処理施設関係の諸室は、B2Fからの配置となりGL-13.7mです。その他、煙突部(GL-8.7m)や灰バンカ部(GL-18.8m)など部位毎に掘削深さが異なっています(図-3)。 山留め壁の仕様は、地下水など周辺環境へ与える影響を最小限に抑えるために、環境アセスメントにおいてソイルセメント壁の採用が条件となっています。本計画では大深度となるごみバンカの周囲には大口径(900Φ)ソイルセメント壁(L=32.0m)を採用し、H-700×300の応力材を使用しています。また、煙突廻りを含む一般の建屋外周部は650Φのソイルセメント壁(L=20.0m~27.0m)とし、断面に応じてH-500×200~H-440×300の応力材を使用する計画としました。なお、建屋内部に存在する段差部の山留めについては、親杭横矢板工法としました。

新設のごみバンカ部には、ほぼ同位置に既存のごみバンカが存在し、既存杭を含めて解体しながらの掘削となるため作業空間が必要です(写真-2)。また、プラントの施工時期に配慮して、炉室などB2F部分の基礎躯体は、ごみバンカ部の掘削と並行して構築する必要があります(写真-3)。そのため、山留め支保工には「地盤アンカー工法」を採用し、工区毎に並行作業が可能となるように計画しました。

図-2 地下工事施工ステップ図の一例

図-2 地下工事施工ステップ図の一例

図-3 山留め計画断面図

図-3 山留め計画断面図

写真-2 ごみバンカ部の掘削状況

写真-2 ごみバンカ部の掘削状況

写真-3 B2F部の基礎先行施工状況

写真-3 B2F部の基礎先行施工状況

PCa工法による地下工事

ボリュームが大きい地下躯体工事の省人化、工期短縮を目的にPCa工法を採用しました。一般に地下躯体のPCa化は、製作時の型枠転用回数が少ないことから敬遠されがちですが、当建物は階高が高く面積も広いため多くの工区に分割して作業する必要があり、支保工架設やコンクリート打設に多くの工数を要することが予想されました。そのため、現在の逼迫した労務状況等から判断しPCa工法を採用しました。

PCa化した部位は柱、大梁および壁で、鉄骨小梁やデッキスラブも含めた地下躯体の構築手順を以下に示します。なお、PCa部材の最大重量は21.3t(梁)、ピース数は全体で414ピースとなっています。建方は120tクローラークレーン2台を用いて行いました。

  • ① 柱PCa取付(図-4、写真-4)
  • ② 壁PCa取付(図-5)
  • ③ Y方向大梁PCa取付(図-6、写真-5)
  • ④ X方向大梁PCa取付
  • ⑤ 鉄骨小梁取付
  • ⑥ デッキスラブ取付
  • ⑦ 壁PCa上部グラウト・目地モルタル詰め
  • ⑧ 柱・梁仕口部配筋
  • ⑨ コンクリート打設(仕口・大梁上部・床)
写真-4 柱PCaの取付状況

写真-4 柱PCaの取付状況

図-4 柱PCaの取付計画図

図-4 柱PCaの取付計画図

図-5 壁PCaの取付計画図

図-5 壁PCaの取付計画図

図-6 大梁PCaの取付計画図

図-6 大梁PCaの取付計画図

写真-5 大梁PCaの取付状況

写真-5 大梁PCaの取付状況

おわりに

敷地が住宅やショッピングセンター等に囲まれたなかでの工事であり、周辺環境への配慮を欠かすことはできません。騒音や振動を出来るだけ抑える工法の採用はもちろんのこと、当JVではホームページ※を立ち上げて工事に関する情報公開を積極的に行っています。工事スケジュールや敷地境界における騒音・振動のモニタリングデータ、工事写真等を掲載することで、地域の皆様に見守られながら竣工に向けて工事を進めています。

http://hikarigaoka-tatekae.jp/

工事概要

工事名称 光が丘清掃工場建替工事
工事場所 東京都練馬区光が丘五丁目3番1号
発注 東京二十三区清掃一部事務組合
設計・監理・施工 タクマ・鴻池特定建設工事共同企業体
工期 2018年3月~2021年3月
主要用途 ごみ焼却所
構造・規模 <工場棟> SRC造(一部S造) 地下2階・地上4階 建築面積7,845.04m² 延床面積22,112.49m²

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