建設業界では人手不足をはじめ、就業者の高齢化などの問題から、生産性向上が喫緊の課題になっています。また、建設現場にはいわゆる3Kと呼ばれる苦渋を伴う作業が多くあり、危険を伴う作業環境の改善も急務となっています。これらの課題を解決するため、社会インフラの整備・維持管理における施工や調査の現場で、「構造物の長寿命化」、「生産性の向上」、「安全性確保」を目的とした建設ロボットの開発を進めてきました。
今回、その第一弾として、社会資本の長寿命化対策の一環であるRC橋脚のRC巻立てによる耐震補強工事において実施される表面処理工法に着目し、その工法のひとつであるバキュームブラスト工法を自動化するロボットを開発しました(写真-1、図-1)。
写真-1 自動化ロボット全景
図-1 施工イメージ
開発した自動化ロボットは、橋脚を把持しながらコンクリート壁面を上下に走行する機能を有する昇降ユニットと、表面処理を行うブラストガンを備えた研掃ユニットで構成されています(写真-1)。
昇降ユニットは、フレームを内蔵エアシリンダで伸縮させ、4箇所に配置された車輪を介して押付け力を作用させることで橋脚に把持させ、コンクリート壁面を50~100mm/sの速度で自律走行します。この際、電源や空圧の喪失などの不測の事態が発生しても、安全装置が働くため、落下することはありません。
研掃ユニットに搭載するブラストガンは、大型化により従来型の約2倍の研掃能力を付与しています(写真-2)。ブラストガンを昇降ユニット上に設置した走行レールに沿って60~80mm/sの速度で水平移動させ、橋脚壁面に密着させることで研掃材の漏れや粉じんの飛散を防止しながら研掃を行います。ブラストマシンは、ツーノズルハンドブラストマシンを使用し、研掃ユニットを2セット搭載することで二面同時研掃が可能です(写真-3)。このロボットにより、生産性の向上、省人化、品質確保、作業環境改善、苦渋を伴う作業の軽減、安全性向上など、多くのメリットを生み出すことができます。
写真-2 ブラストガン対比
写真-3 ツーノズルハンドブラストマシン
当ロボット技術は、RC橋脚の表面処理に限らず、鋼構造物の塗膜除去工や調査・点検などインフラ整備・維持管理のさまざまな場面での活用が期待できます。今後は本技術の社会実装を進めるとともに、さらなる用途開発を進めていきます。