2024年5月、兵庫県香美町小代区において、小長辿発電所(写真-1、2)の営業運転を開始しました。最大出力は199.9kW、年間で約100万kWhの発電量(一般家庭約250世帯分)を見込んでおります。当発電所は現地調査から計画、設計、施工まで一連のプロセスに一貫して当社が携わった初めての流れ込み式・水路式小水力発電所です。
写真-1 小長辿発電所建屋
写真-2 水車発電機
小水力発電とは一般的に出力1,000kW未満の水力発電を指し、その設備は通常、上流から順に、取水設備(写真-3)、導水路、沈砂槽、上部水槽、水圧管路、発電所、放水路で構成されています。
当発電所で採用している流れ込み式は、河川流水を調整することなくそのまま利用する方式のことであり、豊水期や渇水期などの流量変化に発電出力が左右されます。なお、水路式は、引き込んだ水を所定の落差が得られる地点まで水路で導水する形式を指します。
写真-3 取水設備
現地調査やオープンデータを活用した発電量予測計算等から大まかな発電施設の計画を立てて事業性評価を行います。また、併せて流量調査を行うことで、より実態に即した評価をするためのデータを蓄積していきます。
所定の性能を確保した上で事業性・施工性を考慮して合理的な設計を行います。当発電所では水圧に応じて異なる管種を採用することで工事費を抑制し、既設道路への配管埋設とすることで施工性・安全性を確保しました。
上記に加え、設計の精査により省略可能な設備を検討することも重要です。当発電所では、沈砂槽と上部水槽を異なる位置にそれぞれ構築する当初案に対し、これらの設備を一体化することでコスト低減を図りました。
水力発電では水の落差の確保が肝要であるため、施工においては設計通りの機能が得られるように、各部の構造物や機器の設置高について重点的に監理しました。
また、当工事では、急傾斜地への管敷設において、全巻きコンクリート段差基礎での施工が困難であることから、施工と資材手配が比較的容易な方法を検討し、ロックボルト工を応用した固定方法を採用しました(写真-4、5)。
写真-4 急傾斜地への管敷設
写真-5 急傾斜地の導水管固定治具
小水力発電は再生可能エネルギーとして脱炭素社会の実現に寄与するだけでなく、地域の活性化にも繋がります。本発電所で得られた知見を基に今後も小水力発電所の開発を進め、持続可能な社会の実現に貢献していきます。