技術広報誌ET

技術広報誌ET 2022年発刊号

関西を拠点に環境・土木技術のイノベーションを生み出す

504号(2022年1月1日) 大阪テクノセンターの研究施設 技術研究所 大阪テクノセンター 大山 将/技術本部 技術企画部 小山 孝

はじめに

創業の地「伝法」に1972(昭和47)年に開設された研究施設は、約50年に亘り当社の土木技術の研究・開発を支えてきました。つくばに技術研究所を開設した1997(平成9)年以降は、「伝法試験センター」として土木に加えて環境技術の研究・開発拠点として機能してきました。しかし、施設が老朽化したこともあり、環境および土木分野の新たな研究・開発を加速させるために、当施設が建設されました。
ここでは、大阪テクノセンターの実験室等の機能、設備についてご紹介します。

大阪テクノセンターの研究・実験施設の概要

○計測室・前処理室
計測室には、各種分析装置を設置し、重金属類などの元素、有機化合物などの定量・定性分析、各種試料の化学組成分析、水質分析などを行います(写真-1)。原子吸光分光光度計、ICP発光分光分析装置、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)、全有機炭素計(TOC)、X線回折分析装置(XRD)、蛍光X線分析装置(XRF)、イオン分析計、レーザ回折式粒子径分布測定装置などを配備しています。土壌や水質などの環境分析のほか、原子や結晶構造の解析などにも即応できる機能を有しています。

○環境実験室(写真-2)
土壌・地下水汚染の修復に関する基礎検討、汚染物質の挙動を把握するためのカラム試験、管状炉や電気炉を用いた加熱試験、熱重量分析など、基礎研究や室内試験(ラボ試験)を行います。

写真-1 計測室

写真-1 計測室

写真-2 環境実験室

写真-2 環境実験室

○生物実験室(写真-3)
土壌・地下水汚染のバイオレメディエーションの適用性試験や有用微生物の培養試験など、微生物や植物が持つ機能の有効活用を目指した研究開発を行います。無菌操作のためのクリーンベンチや15~40℃まで室温を自由に設定できる恒温室を併設しています。

○土質実験室・土質恒温恒湿室(写真-4)
土質分野に限らず、地盤改良や地盤環境全般に関する試験や研究開発を行います。各種土質試験のほか、地盤改良の配合試験、固化・不溶化処理試験、廃棄物の分別試験、汚染土壌の浄化試験などを行います。
改良体の一軸圧縮強度を測定する計測室を併設しています。

写真-3 生物実験室

写真-3 生物実験室

写真-4 土質実験室

写真-4 土質実験室

○多目的実験室(写真-5)
土壌洗浄試験、排水処理試験、汚泥の脱水試験、廃棄物分別試験、中規模の加熱試験、ウルトラファインバブル(UFB)を用いた水質浄化試験など、あらゆる目的に応じて使用するスペースです。

写真-5 多目的実験室

写真-5 多目的実験室

○材料実験室および材料計測室
材料実験室は、コンクリートの配合試験や各種土木材料の品質・性能確認試験などを行います(写真-6)。エアコン完備で室内環境を20℃に設定できるほか、養生水槽を備えた恒温室を併設しています。
隣接する材料計測室では、繰り返し荷重による疲労試験に対応した2000kN剛性試験機、1000kN万能試験機を設置し、圧縮試験、引張試験、曲げ破壊試験など、主にコンクリート材料の各種強度試験を行います(写真-7)。

写真-6 材料実験室

写真-6 材料実験室

写真-7 1000kN万能試験機

写真-7 1000kN万能試験機

○地質実験室・地質解析室(写真-8)
山岳トンネル、シールド・推進、岩盤掘削、長大法面掘削などに先立ち、地山の地質構成や岩盤の状態を解析するためのスペースです。岩石の物理試験、偏光顕微鏡観察による岩石・鉱物の同定を行います。

○屋外実験ヤード(写真-9)
コンクリート構造物の実物大試験体作成、打設試験など、大型の設備を用いる試験を行うためのスペースです。土木分野に限らず、実設備やパイロット設備による土壌・地下水浄化試験などにも対応しています。

写真-8 地質実験室

写真-8 地質実験室

写真-9 屋外実験ヤード

写真-9 屋外実験ヤード

ゼネコンでは数少ない関西の研究拠点として

大阪テクノセンターは、ゼネコンでは稀な関西での研究施設です。当センター4階には3面スクリーンを備えたプレゼンスペースの「イノベーションプレイス(写真-10)」、3階には創造力を掻き立てる技術交流の場である「COMMUNICATION HUB(写真-11)」、1階には会議室を設置しています。関西に拠点を置く異業種企業との連携・共同開発に加え、西日本の大学との共同研究や技術交流を積極的に進めることにより、関西の環境・土木技術のイノベーション基地として活用していきます。

写真-10 イノベーションプレイス

写真-10 イノベーションプレイス

写真-11 COMMUNICATION HUB

写真-11 COMMUNICATION HUB

おわりに

ここ大阪テクノセンターは、土木分野の研究部門に加えて、環境エンジニアリング本部の新たな拠点となります。土壌・地下水汚染や廃棄物処理など強みを持つ環境修復技術の更なる深化を進めるほか、再生可能エネルギー分野や脱炭素社会の実現に向けた研究・開発に取り組んでいきます。伝法の施設は閉鎖となりますが、創業の地で培った精神を胸に、新たな地でSDGs実現に向けて未来志向の研究開発を行ってまいります。

504号(2022年1月1日)の記事

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