国土交通省は2020年度より、受発注者の作業効率化などを目的として「遠隔臨場」の試行に取り組んでいます。
「遠隔臨場」とは、ウェアラブルカメラ等による映像と音声の双方向通信を使用して「段階確認」、「材料確認」と「立会」を行うことで、受注者における「段階確認に伴う手待ち時間の削減や確認書類の簡素化」、発注者(監督員)における「現場臨場の削減による効率的な時間の活用」などを目指しています。
新型コロナウイルス感染症の影響でWeb会議の利用が増えてきましたが、遠隔臨場の仕組みはWeb会議とほぼ同じです。インターネット回線とカメラ、マイク、Web会議システムがあれば実施可能です。
検査官は発注者事務所に設置した端末でWeb会議システムに接続してカメラの画像を確認し、ウェアラブル端末を着用した現場職員(写真-1)に音声や画面を通して検査箇所を指示し(写真-2)、送られて来た画像を確認(写真-3)することにより検査を行います。
写真-1 ウェアラブルカメラ装着例
写真-2 検査状況(舞川水門)
写真-3 事務所内の端末画面
①一関遊水地舞川水門新設工事(写真-2、3)
(発注者:国土交通省東北地方整備局)
ウェアラブルカメラ:ヘッドマウントディスプレイ(富士通)
Web会議システム:Live On(ジャパンメディアシステム)
②福知山市段畑雨水ポンプ場建設工事
(発注者:日本下水道事業団)
ウェアラブルカメラ:MOVERIO BT-350(エプソン)
Web会議システム:Live On(ジャパンメディアシステム)
③令和元年度 三遠道路8号橋下部工事(写真-4)
(発注者:国土交通省中部地方整備局)
ウェアラブルカメラ:HMT-1(RealWear)
Web会議システム:Live On(ジャパンメディアシステム)
④国道2号大樋橋西高架橋工事(写真-5)
(発注者:国土交通省中国地方整備局)
ウェアラブルカメラ:HMT-1(RealWear)
Web会議システム:Teams(Microsoft)
写真-4 検査状況(三遠道路)
写真-5 検査状況(大樋橋西高架橋)
国土交通省では、2022年度より全ての直轄工事で遠隔臨場を原則適用することを目指しています。また、コロナ禍を契機として、非接触・リモート型の働き方への転換が進んでおり、遠隔臨場の導入が加速しています。一方で、不安定な通信環境による画質の劣化や音声の遮断、使用機器の脆弱性などの課題も見えてきており、5Gの活用促進や機器の性能および耐久性向上なども期待されます。当社においても、生産性向上に加えて、現場の衛生環境向上の観点からも遠隔臨場を積極的に活用し、効率的かつ安全な現場管理業務の実現を進めていきます。
(技術本部 技術企画部 ICT推進課 藤原 祐一郎)