技術広報誌ET

技術広報誌ET 2021年発刊号

液状化対策用の新しい注入材を開発

501号(2021年4月1日) CXPグラウト工法 技術本部 技術企画部 加藤 満
技術本部 土木技術部 後藤 宇

はじめに

薬液注入による液状化対策技術は、既設構造物の基礎地盤を中心として数多く適用されています。しかし、その注入材である水ガラス系薬液は、地盤のpHが9程度以上の環境下では劣化しやすく耐久性に課題があるため、工場施設等で散見されるアルカリ性地盤では適用困難とされています。このため、重要施設であっても液状化対策を躊躇しているケースもあり、地域の「安心・安全」を図る上で大きな支障となっています。
そこで、地盤のpHによらず設計強度を確保でき、かつ安全で浸透性や耐久性に優れた複合ポリマー型注入材「CXP」(Complex Polymer)を開発しました。

図-1 硬化メカニズム

写真-1 ホモゲルの例(石鹸状)

CXPの特徴とフィールド試験

CXPは、アクリル酸マグネシウム(以下、AA-Mg)を主剤とし、ポリ塩化アルミニウム(以下、PAC)および添加剤を混合・添加した薬液です。注入後、重合したAA-Mgから成る高分子鎖は、架橋剤となるPACによりネットワークを形成し、高強度のゲルになります(図-1、写真-1)。この高分子鎖の主鎖骨格は、化学的に安定している炭素-炭素結合からなるため、劣化要因となる加水分解等の分解反応が発生せず、長期耐久性が確保されます。アルカリ性地盤への適用性としては、pH10~12に調整した砂を用いた改良土が設計強度を確保し、長期耐久性を有することを室内試験で確認済みです。また、安全性については、CXPが水生生物に影響せず、改良土が土壌汚染対策法の指定基準に適合することを確認済みです。
2017年9月に行ったフィールド試験では、改良土は設計で定めた強度(60kN/m2以上)および出来形(半径1.25m以上、写真-2)を十分満足しました。2020年10月には供用中の灯油タンクの液状化対策工事に採用され、既設構造物直下の地盤を安全かつ十分に改良できることが確認されました(写真-3)。

写真-2 改良土の出来形測定例(測定半径1.55m)

写真-3 灯油タンク直下地盤への斜め削孔状況

おわりに

CXPは新しい注入材であり、旧建設省の「薬液注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針」(昭和49年通達)で定義された薬液(注入材)には該当しません。このため現在、公共工事での採用を目指して国土交通省へ技術説明等を行っています。今後は工事の実績を重ねて液状化被害を防止し、地域の安全を確保することで、広く社会貢献していきたいと考えています。

501号(2021年4月1日)の記事

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