技術広報誌ET

技術広報誌ET 2021年発刊号

地域の願い、安全・安心をとりもどすために

501号(2021年4月1日) RD最終処分場二次対策工事 大阪本店 工事事務所 日高 典哉
環境エンジニアリング本部 環境イノベーション部 森田 俊成

はじめに

1999年10月に民間の産業廃棄物業者RD社の最終処分場近隣住民からの苦情に基づき滋賀県が調査した結果、処分場の排水溝から硫化水素ガスが検出されたことに端を発し、不適正な廃棄物の埋め立てやそれに起因する地下水汚染が発覚しました。この「旧RD最終処分場問題」に対し、地下水汚染の拡散防止を目的とした一次対策工事が2012年9月~2013年3月に行われましたが、抜本的対策として実施されたのが今回ご紹介する二次対策工事です。当工事の目的は、位置を特定できた有害物の掘削除去、底面遮水層の修復と側面に露出した地下水帯水層の遮水、浸透水の汲み上げと水処理および法面の整形覆土を行い、生活環境保全上の支障またはそこから生じるおそれを除去することです。
ここでは、当工事で実施した廃棄物選別工、有害物掘削工、 底面遮水工、およびICT土工の活用について紹介します。

廃棄物選別工

廃棄物選別工は、一次対策工事で仮置きされた廃棄物を含む土砂(以下、廃棄物土と称す)と二次対策工事で掘削する廃棄物土を選別除去廃棄物と埋戻可能物に選別することを目的としています。処理能力は300m3/日(1日7時間稼働)が求められたほか、所要性能として、表-1に示す目標回収率(容量割合)が規定されていました。
これらの性能を満足することに加えて、選別土(埋戻可能物のうち、50mmアンダーのその他土砂)に含まれる廃棄物量をさらに減じるために以下の工夫を行いました。

図-1 工事計画平面図

写真-1 現場全景(2021.1撮影)

画像:表-1 目標回収率(容量割合)

表-1 目標回収率(容量割合)

①事前の選別助剤選定およびふるい目比較試験の実施

現場で採取した一次選別後の廃棄物土(おおむね300mm以下)について、選別助剤選定試験およびふるい目を決める分別試験を、発注者および設計者の立会のもと当社技術研究所伝法試験センターにて実施しました。選別助剤には、当社開発の高分子系改質剤クリーンウォーター(NETIS:KT-130011、2019.10月掲載終了)の液体タイプ(以下、CWL1と称す)と粉体タイプ(以下、CWと称す)、市販の無機鉱物系改質剤、および繊維混合系土質改質材の4種類を用い、ふるい目20mmで無添加を含め5ケースの試験を実施しました。分別試験では、ふるい目を20mm、25mm、50mmと変化させて比較検討しました。
その結果、使用する選別助剤はCWL1とCWを選定し、ふるい目は25mmと決定し、使用するハイバウンドスクリーン、ディスクスクリーンのふるい目設定に反映しました(図-2、写真-2,3)。

図-2 20mm以下重量割合(高含水、乾燥後、再選別)

写真-2 ふるい目25mm ふるい下状況

写真-3 ふるい目50mm ふるい下状況

②CWL1の自動添加装置

前述の試験でCW、CWL1とも基本添加量1.2kg/m3の結果を得ましたが、施工上以下の問題点がありました。

そこで、選別助剤添加ポンプに汎用の高粘度用ダイヤフラムポンプ(吐出量310~3,100mL/min)を使用してCWL1自動添加装置を製作し、土質改良機に取り付けました(写真-4、5)。
2019年10月の選別処理終了までに、約288トンのCWL1を使用して、安定した廃棄物土の改質を行いました。

写真-4 CWL1自動添加装置

写真-5 CWL1添加用の配管

③選別処理施設の保守管理と回収率確認試験

日立建機日本(株)および太洋マシナリー(株)の協力を得て、選別処理施設が急なトラブルで停止した際も、24時間以内に修理できる体制を構築しました。2015年4月(選別開始)から2019年10月(選別終了)までの約23万m3の選別において、修理を要するトラブルが70回発生しましたが、迅速な対応により選別処理施設の停止期間を最小限にすることができました。
廃棄物土からの選別除去廃棄物および埋戻可能物(選別土等)の回収率の確認を、選別開始時の性能試験で2回、施工期間中は、5万m3に1回の頻度で計4回行いました(写真-6)。その結果、表-2に示すとおり目標回収率を満足しました。

写真-6 回収率確認試験状況

表-2 回収率(容量割合)

有害物掘削工

有害物掘削工は区画ごとに、開削工法、矢板土留工法、全旋回オールケーシング工法の3工法から選定して掘削しました(区画は図-1参照)。矢板土留工法では、支障物等があり鋼矢板による確実な締切りが不可能であったため、以下の対策を講じました。

①全旋回オールケーシング工法による砂置換

最初に施工したA区画(鋼矢板Ⅲ型L=10m~13.5m)では、オーガ併用圧入工法で鋼矢板を打設しましたが、鋼材、コンクリートがら、繊維やフィルムのロールなどの埋設廃棄物が支障となり、鋼矢板の破損が生じる事態が発生しました(写真-7、8)。
C~G区画は掘削が深く、鋼矢板がL=21.5mの長尺となっており、バックホウでの支障物撤去ができませんでした。そこで、鋼矢板打設法線上をラップしてφ1,500mmの全旋回オールケーシング工法にて掘削し、コンクリート構造物などの支障物を除去しました(写真-9、10)。掘削部を砂置換することで、鋼矢板打設を可能としました。

写真-7 鋼矢板打設状況

写真-8 支障物撤去状況

写真-9 全周回転機による支障物撤去状況

写真-10 撤去したコンクリート構造物

②土留め形状および土留め支保工の変更

当初は、設計通り10m×10mの1区画ずつ施工を行っていましたが、工程短縮および資機材搬出入回数の削減をはかるため、隣接する区画を可能な限りまとめ、その周囲を囲む土留め形状に変更しました。10m×10m区画では火打ち梁のみで支保する計画でしたが、掘削幅が30mとなる箇所が生じるため、高強度腹起し専用材(ヒロセメガビーム)および高強度切梁専用材(ツインビーム)を使用して支保する切梁形式に変更しました(図-3、4)。これにより、大幅に工期短縮を図ることができました。

図-3 土留支保工変更前

図-4 土留支保工変更後

底面遮水工

設計では、底面遮水工にセメント改良土が指定されていましたが、クラックの発生により遮水性が損なわれる可能性がありました。そこで、確実な遮水を図るため、吸水膨潤作用による自己修復機能を有するベントナイト混合土の併用を提案しました。関係者で協議し、施工中の降雨によりベントナイトの機能が失われないように、ベントナイト混合土の上下をセメント改良土で挟み込む構造としました(図-5)。
また、遮水層の現場透水係数は1×10-6cm/s以下に指定されていたため、室内配合試験では透水係数1×10-7cm/s以下となる配合とし、含水比および締固め度を求めました。加速度センサー搭載型GPSローラーを使用した試験施工により転圧回数およびCCV値(加速度応答値)を求め、透水係数が1×10-6cm/s以下になることを確認しました。実施工では、オペレーターが管理用モニターでCCV値を確認しながら締め固めることで、リアルタイムに締固め度を管理しました(写真-11、12)。その結果、1,000m3毎の試料採取による室内透水試験は、いずれも1×10-6cm/s以下を満足しました。

図-5 底面遮水工施工断面図

写真-11 加速度センサー搭載型GPSローラー

写真-12 ローラー車載管理画面

ICT建機による情報化施工

法面の整形や覆土にはマシンコントロールバックホウを活用することで丁張りを不要とし、安全かつ効率的な施工が可能になりました(写真-13)。また、掘削および盛土範囲が広大であったことから、定期的にドローンによる写真測量を行い、掘削および埋戻しの土量管理を行いました(写真-14)。

写真-13 MCバックホウによる法面整形

写真-14 UAV測量で得られた点群データ

おわりに

当工事は7年の歳月を経て、ようやく完成を迎えることができました。工事完成後もモニタリング調査が行われ、2年後の2023年3月までに実施計画の目標達成状況の確認、5年後の2026年3月を目途に対策工の有効性の確認が行われるため、これからも注視していきたいと思います。今回の報告が、今後の同種工事や、近年増加している自然災害廃棄物の処理、最終処分場の減容化、再生工事の参考になれば幸いです。

工事概要

工事名称 平成25年度第RD-3号旧産業廃棄物
最終処分場二次対策工事
工事場所 滋賀県栗東市小野地内
発注者 滋賀県
施工者 鴻池・不動テトラ・八田特定建設工事共同企業体
工期 2013年12月~2021年3月
工事内容 1.廃棄物土・有害物掘削工 1式
2.廃棄物選別工 1式
3.汚染地下水拡散防止対策工 1式
4.浸透水処理施設工 1式

501号(2021年4月1日)の記事

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