本工事は、名古屋市港区において仕上り内径φ1,500㎜の下水道築造をミニシールド工法にて施工する工事です(図-1、写真-1)。
シールド工事は、市街地の主要幹線道路直下での工事が主流であり、道路の陥没や地下構造物・埋設物の損傷など、第三者に大きな影響を与える事故が懸念されます。
今回は、地下埋設物損傷事故を“0”とするためにCIM(Construction Information Modeling)を活用した施工管理事例について紹介します。
①施工検討・計画への活用
近接する地下構造物(種類・位置・深度情報)とシールド路線を3次元モデル化することにより、施工による地下構造物等との干渉の有無を容易に確認することが可能となりました。また、補助工法である薬液注入工事の施工計画においても、薬液注入範囲を3次元モデル化してCIMモデルと統合・可視化することで、地下構造部等に影響を与えない施工方法(注入位置、方向、順序など)を策定するなど、CIMモデルを有効活用しました。
CIMモデルには、地質や地下水位の情報を追加しており、シールド掘削における留意点等を区間毎に事前に把握することができ、より的確で安全な施工管理を行うことができました。
図-2 CIMによる3次元モデル(左:鳥瞰図、右:地中からの見上げ図)
②安全教育への活用
工事関係者への安全教育時にCIMモデルを活用することで地下埋設物の位置や近接箇所など、視覚的に重要なポイントを確認することができ、図面などで説明するのに比べて非常に分かりやすく周知を図ることができました。
③施工データ管理への活用
CIMデータ上のシールド路線をセグメント測点毎に区切り、そこに施工記録・出来形・品質等の施工データを紐付けすることにより、PC画面上でクリックした測点の各種データを即時に確認できるようにしました。これにより、施工中のデータ管理はもちろん、施工後の維持管理用データとしても非常に有効な活用が期待できます。
様々な地下埋設物が混在する市街地でのシールド工事において、CIMモデルにより地下を可視化することで、施工計画・管理を効率化し、より安全で確実な施工を行うことができました。今回の経験を活かし、今後もCIM活用の拡大を図るとともに、CIMに精通した技術者の育成に取り組んでまいります。
工事名称 | 油屋幹線下水道築造工事 |
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工事場所 | 愛知県名古屋市油屋町地内 |
発注者 | 名古屋市上下水道局 |
施工者 | 鴻池・本間・ヒメノ特別共同企業体 |
工期 | 平成29年2月~平成31年3月 |
工事内容 | 管きょ工(ミニシールド) φ1,500mm 845.7m 管きょ工(鋼管さや管推進)φ1,500mm 10.1m 管きょ工(刃口推進) φ900mm 2.9m 補助地盤改良工 1式 立坑工 3箇所 マンホール工 3箇所 付帯工 1式 |
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