自動化オープンケーソン工法(SOCS;Super Open Caisson System)は、水中掘削機の導入により、従来の圧入オープンケーソン工法では困難であったケーソン刃先直下地盤の掘削・除去を実現した大深度オープンケーソン構築技術(図-1)です。平成8年に関東地方建設局(当時)発注の玉里立坑で初採用されて以降、施工の確実性、品質、安全性ならびに省力化・省人化に対し発注者から高い評価を得て、深度50m前後の大規模な立坑工事を中心に実績を積み重ねてきました。このたび、SOCSのコア技術である水中掘削機を大幅にバージョンアップし、矩形断面対応など多岐にわたる改良を施した新型機が完成しましたのでご紹介します。
図-1 SOCS概要図
(1)異形断面への対応
水中掘削機は、ケーソン刃先直上に設置した走行レール上を水平方向に走行し、掘削時は走行・把持装置で本体を走行レールに固定して掘削反力を確保します。従来機はレール曲率が一定の円形断面のみの対応でしたが、新型機(写真-1)では、レール曲率に合わせて走行・把持装置が追従する機構(図-2)により、矩形、小判形、楕円形など異形断面での施工を可能にしました。
写真-1 新型水中掘削機
図-2 異形断面対応の走行・把持装置
(2)掘削可能な壁厚の拡大
大深度ケーソンでは、土水圧などの荷重への耐力確保やケーソン本体の浮き上がり防止のため、壁厚が極めて大きくなります。従来機は壁厚2.5m対応でしたが、さらなる大深度への適用に向け、新型機では3.5m対応に拡大しました(図-3)。加えて、耐水圧性能を1.2MPa(水深120m相当)に向上させました。
水中掘削を管理する掘削管理システムも新システムに更新しました。精度管理する上で重要なケーソン内全体での刃先下掘削状況は、3次元表示で任意の方向から確認できます。また、掘削力を従来機の1.1~1.2倍に向上させ、掘削力の作用方向・大きさをリアルタイムでベクトル表示することで、遠隔操作による効率的な掘削が可能となりました(図-4)。
地盤の種類や硬さ、傾斜による掘削面ないの地盤の違いや傾斜修正など、施工条件に応じた掘削により、傾斜精度1/500~1/2,000の構築が可能です。
図-2 異形断面対応の走行・把持装置
図-4 掘削管理システム
大規模・大深度ケーソンは、質の高い社会資本の効率的な整備や災害に強いライフライン再構築で必須の施工技術です。新型水中掘削機により幅広いニーズに対応し、地下空間の有効利用を通じて社会貢献をしていきたいと考えています。
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