安来市民会館は、旧市民会館の解体に伴う市民の意向を踏まえ、大規模な集会や集客のための施設とするだけでなく、文化芸術活動の拠点として新たなコミュニケーションを生み出すまちづくり拠点施設として計画されました。
外観デザインは、コンクリート打ち放しの壁面と石州瓦やガラス素材との全体バランスを意識し、ボリューム感のある水平方向の線に対して、垂直方向は川のせせらぎや竹林をモチーフとしたストライプ状の線が展開されています(写真-1)。ここでは、壁面に採用された化粧打ち放しコンクリートの施工を中心に紹介します。
写真-1 建物外観
○大ホール
プロセニアム形式(舞台と観客が区分)の多目的ホールで、可動型の音響反射板を設置することにより音楽を主体とする生音を活かしたホールとなっています。収容人員は最大1,008人で、1、2階に客席を分けることで、客席から舞台までの距離を縮め視界を十分に確保しています(写真-2)。
○小ホール
収容人員300人程度の音楽を主目的とした多機能ホールです。市民の使い易さを考え、客席は全て可動式でロールバックチェア方式により後方壁面に収納できます(写真-3)。
写真-2 大ホール
写真-3 小ホール
当工事では、外壁および内壁のほとんどが塗装やタイルなどの仕上げ材が無い化粧打ち放しコンクリート仕上げで、以下7種類の型枠仕様にて施工しています。これらの中から①および⑦で用いた型枠の概要を紹介します。
○杉板浮造り仕上げ
安来市産材の杉を伐採し地元で製材・桟積みをした後、人工乾燥を行ないモルダー仕上げ(プレーナー処理)を行いました。プレーナー処理を行った杉板を浮造りに仕上げて、型枠パネル製作工場で杉板を型枠パネルに貼り付けて完成します(写真-4)。
○特殊化粧型枠(積み木・杉板模様)スチロール造形
木材の型枠では加工が困難な形状であるため、スチロールによる造形ボードを採用しました。CADデータに基づくコンピューター制御で、ニクロム線によりスチロールを切断し成型しました。また、スチロール型枠は金型の中にスチレンビーズおよび発泡材を混合し、熱を加えることにより成型しました(写真-5)。
a. 型枠組立状況
写真-4 杉板浮造り仕上げ
b. 打ち上がり壁面
a. 型枠組立状況写真-5
特殊化粧型枠による仕上げ
b. 打ち上がり壁面
工事着手前に型枠・鉄筋・コンクリートの工事毎に施工検討部会を開催し、一連の施工要領等を取りまとめました。実施工においても工区毎に施工前打合せを行い、施工担当者間の認識を統一することに重点を置きました。打設に当たっては、コールドジョイント等を発生させないように打設の順序、高さ、時間等を考慮した打設計画書を作成するとともに、1回の打設量を150㎥程度に抑えることで無理のない作業ができるにように配慮しました。施工計画書の特記には、打設に関わる注意事項として15項目を列記しています。通常のコンクリート打設時の注意事項に加え、「汚れ防止対策」、「黒しみ・ピンホールを無くす」、「パネル目違いの修正」に対する取り組み方法を記載しました。
監理者、JV職員および作業者が一体となって取り組んだことにより美しいコンクリート面をつくることができました(写真-6)。
写真-6 コンクリート打設状況
安来市の文化・芸術の新たな拠点となる安来市総合文化ホール「アルテピア」を無事に竣工することができました。多種多様なコンクリート化粧打ち放しの品質管理や工期への対応を監督員、監理者のご指導により乗り越えることができました。心より感謝申し上げます。
工事名称 | 安来市民会館(仮称)建設工事(建築) |
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工事場所 | 島根県安来市切川地区 |
発注 | 安来市長 近藤宏樹 |
設計・監理 | RIA・田中・ケーアイ建築設計共同企業体 |
施工 | 鴻池組・平井建設特別共同企業体 ※建築工事 |
工期 | 平成27年7月~平成29年7月 |
主要用途 | ホール |
構造・規模 | <市民会館> SRC造+RC造、S造(ハイブリッド構造)地上4階 建築面積4,718.61㎡ 延床面積7,238.47㎡ <エネルギー棟> S造 地上1階 延床面積:263.84㎡ |
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