立体的な緑地空間や音楽ホールをもつ複合施設の施工

豊洲シビックセンター   

東京本店 工事事務所 鍋島 謙信 

はじめに

東京都江東区の臨海部に位置する豊洲地区は、オフィスビルや高層マンション等の建設が進み、急激な人口増加が問題化しています。区はこの状況に対処するため、既存文化センターの機能を維持した新たな複合施設「豊洲シビックセンター」を整備することで、住民サービスの向上を図ることとしました。
 新たなシビックセンターには、建物セットバック部(8階以上)に現代の里山をイメージした立体的な緑地空間が設けられ、中間階(4階~6階)には音楽ホールが配置されています(図-1)。ここでは、これら施設の概要および施工上の工夫等について紹介します(関連記事ET474号)。

 

立体的な緑地空間

 

急勾配柱鉄骨の施工

精度管理に当たっては、高精度セオドライトによる測量で得られた鉄骨部材の座標データをクラウドサーバーにて管理することで、建て方時や本締め・現場溶接後の挙動をリアルタイムで確認しながら進めることができました(写真-6)。

眺望の得られる音楽ホール

 建物中間階に設置された音楽ホールは、ガラス貼りカーテンウォールの内側にある遮光回転パネル、その内側にサスペンドガラスがあり、回転パネルを開放することで、東京湾への眺望が得られる計画となっています(図-2、写真-7)。このような仕様の音楽ホールはほとんど例がないため、音響性能や直下に位置する区出張所、上階の文化センターに対する防遮音対策を行うため、建築主、設計者および施工者からなるホール分科会を設けて技術検討を進めました。なお、当ホールの性能目標は、室内騒音レベルでNC-20以下、室間遮音性能でDr-80以上となっています。 
 
 

防振構造による壁・天井・床の施工

ホールの壁、床および天井を合わせた6面全てに、防振ゴムと防振鉄骨を介した「防振構造」(浮き構造)が採用されています。天井は大梁に設けた防振ゴム等に防振鉄骨梁が載る構造で、この梁から天井部材が吊り下げられています(写真-8)。構造躯体鉄骨との同時施工は不可能であったため、上部スラブに仮設開口を設け、ホール内のステージ足場上に材料を搬入、取り付けを行いました。
客席部の床は、ホール分科会で様々な納まりを検討した結果、躯体(構造スラブ)を階段状ではなく斜めスラブに変更し、その上に防振ゴムと鋼材を設置して浮き床を施工しました(写真-9)。
 

 

おわりに

 現代の里山をイメージした立体的緑地空間や眺望の得られる音楽ホールなど、夢のある多様な空間からなる「豊洲シビックセンター」の施工を無事終えることができました。工事関係者の創意工夫により現場力を発揮し、難しい施工条件や厳しい工期を乗り越えることができました。ご指導いただいた江東区、ならびに日建設計の関係各位に心より感謝申し上げます。
 
 
工事概要 
工事名称 江東区(仮称)シビックセンター新築工事
工事場所 東京都江東区豊洲二丁目2番
発注 東京都江東区
設計・監理 (株)日建設計
施工 鴻池・多田・増 建設共同企業体
工期 平成24年12月~平成27年6月 
構造 鉄骨造(CFT柱)、一部鉄筋コンクリート造(制震構造)
階数 地下1階 地上12階 搭屋1階
面積

建築面積1,945.37m2  延床面積15,537.72m2

 

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478号(2015年07月01日)