立体的な緑地空間や音楽ホールをもつ複合施設の施工
豊洲シビックセンター
東京本店 工事事務所 鍋島 謙信
はじめに
東京都江東区の臨海部に位置する豊洲地区は、オフィスビルや高層マンション等の建設が進み、急激な人口増加が問題化しています。区はこの状況に対処するため、既存文化センターの機能を維持した新たな複合施設「豊洲シビックセンター」を整備することで、住民サービスの向上を図ることとしました。
新たなシビックセンターには、建物セットバック部(8階以上)に現代の里山をイメージした立体的な緑地空間が設けられ、中間階(4階~6階)には音楽ホールが配置されています(図-1)。ここでは、これら施設の概要および施工上の工夫等について紹介します(関連記事ET474号)。
![]() 写真-1 建物全景 |
![]() 図-1 断面図(提供:(株)日建設計) |
立体的な緑地空間
建物北西面の8階以上は階段状に壁面がセットバックし、各階に設けられた屋外テラスには高木を植栽し、里山の棚田をイメージした設計がなされています(写真-2)。この部分の構造フレームは、傾斜した4面ボックス柱(□-800㎜)とカバープレート梁(WH-400×400)で構成されています。また、外装材としてカーテンウォール部のバックマリオンと縦のラインを合わせ、優良木質建材として認定された木製ルーバーが配置されています。 |
![]() 写真-2 セットバック部の緑地空間 |
急勾配柱鉄骨の施工
![]() 写真-3 鉄骨受け架設支柱 |
通常のラーメン構造における建て方手順では部材の位置決めが難しいため、斜め柱を保持する仮設の支柱を設けて建て方を行いました(写真-3)。また、地上ヤードで作業足場や昇降タラップ等の安全設備を鉄骨に取り付けてから楊重することで、建て方直後から安全に作業ができるように配慮しました(写真-4、5)。 |
![]() 写真-4 斜め柱の吊り上げ状況 |
![]() 写真-5 タラップ・親綱の設置状況 |
精度管理に当たっては、高精度セオドライトによる測量で得られた鉄骨部材の座標データをクラウドサーバーにて管理することで、建て方時や本締め・現場溶接後の挙動をリアルタイムで確認しながら進めることができました(写真-6)。
![]() 写真-6 3次元測量とリアルタイム精度管理 |
眺望の得られる音楽ホール
![]() 図-2 音楽ホール内観パース(提供:(株)日建設計) |
![]() 写真-7 完成間近の音楽ホール |
防振構造による壁・天井・床の施工
客席部の床は、ホール分科会で様々な納まりを検討した結果、躯体(構造スラブ)を階段状ではなく斜めスラブに変更し、その上に防振ゴムと鋼材を設置して浮き床を施工しました(写真-9)。
![]() 写真-8 防振鉄骨梁と天井下地の施工状況 |
![]() 写真-9 斜めスラブ上に設置された防振ゴムと鋼材 |
おわりに
工事名称 | 江東区(仮称)シビックセンター新築工事 |
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工事場所 | 東京都江東区豊洲二丁目2番 |
発注 | 東京都江東区 |
設計・監理 | (株)日建設計 |
施工 | 鴻池・多田・増 建設共同企業体 |
工期 | 平成24年12月~平成27年6月 |
構造 | 鉄骨造(CFT柱)、一部鉄筋コンクリート造(制震構造) |
階数 | 地下1階 地上12階 搭屋1階 |
面積 |
建築面積1,945.37m2 延床面積15,537.72m2 |
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