ガスだけ通して水は遮断「ガス透過性防水シート」
土木事業本部 環境エンジニアリング部 松久 裕之
ガス透過性防水シートとは
ガス透過性防水シートは、ジオシンセティックス技術研究会(嘉門雅史会長:一般財団法人環境地盤工学研究所理事長・京都大学名誉教授)内のガス透過性防水シートキャッピング工法グループ(当社含む13団体)が開発したもので、文字通り、水は通さずにガスは透過させるキャッピングシートです。図-1に示すように、埋立完了後の廃棄物の表面をこのシートで覆うことで雨水の浸透を防止するとともに、廃棄物から発生する水蒸気などのガスを大気中に排出します。雨水の浸透にともなう浸出水が大幅に削減できることから、浸出水の処理費用の低減、および浸出水の漏えいによる広域的な汚染リスクの低減を図ることができます。 |
![]() 図-1 廃棄物処分場の概要図 |
開発の経緯と概要
![]() 図-2 従来のガス透過性シート |
ガス透過性防水シートは、遮水性とガス透過性を兼ね備えた微多孔を有するシート膜を、排水性の高い不織布(厚みのあるフェルト状のマット)で挟み込んで保護・補強して一体化させています。従来、端部まで一様な構造のシート同士を接合する場合、実質的には排水性を有する不織布同士が接合された構造となるため、不織布を通じて雨水等が浸透するおそれがありました(図-2)。開発したシートは、端部を加熱圧縮処理してプラスチックシート状の接合面を設けることにより、熱融着でシート状の接合面同士を容易かつ確実に接合することができます(写真-1、図-3)。不織布層が表面に露出しないため、水が浸入することがなく、シート接合部から廃棄物層への雨水等の浸透を防止することができます。また、遮水シート(ポリエチレン系)との熱融着も容易であるため、処分場底部の遮水シートと接合することで廃棄物層を完全密閉することができます。 |
![]() 写真-1 開発した「ガス透過性防水シート」 |
![]() 図-3 接合部断面の構造 |
技術評価
開発したシートを用いたキャッピング工法は、公益社団法人日本材料学会の技術評価証明を受けています(平成24年12月、第1013号)。
除染現場でも活躍
現状では除染等工事共通仕様書(第7版)に適合している唯一の製品であり、除染により発生した廃棄物の仮置場において、可燃性保管物のキャッピングシートとしても活用されています(写真-2)。
![]() 写真-2 除染現場での活用例 |
本誌掲載記事に関するお問い合わせは、経営管理本部 経営企画部CSR・広報課までお願いします。なお、記事の無断転載はご遠慮ください。