駅ホームを覆う大屋根の施工

阪神甲子園駅改良工事  

大阪本店 工事事務所 立野 哲也 

はじめに

 阪神甲子園駅は、阪神タイガースの本拠地であり、高校球児の憧れの舞台でもある阪神甲子園球場の最寄り駅であるとともに、バスターミナルのある交通結節点で、駅周辺には大規模商業施設があります。現在、より快適で使いやすい駅にするための改良工事を行っており、ホームの拡幅やエレベーターを整備するとともに、駅舎を改築し、コンコースの拡張を進めています。ホーム中央部には「白球」や高校球児のユニフォームの「白色」をイメージした大屋根を設置しました。この大屋根には自然光を通す膜素材が採用され、「甲子園」の象徴である「浜風」が吹き抜けるデザインが取り入れられています(写真-1)。ここでは、この大屋根の架設工事について紹介します。

 

大屋根の概要

 既存高架駅改修による構造的な制約から、大屋根を支える柱には、南北37.65m×東西10.10mの大スパン構造を採用し、約2,300m2の大屋根を10本の柱で支持しています。屋根骨組は高い強度を有するとともに極めて軽量という長所を持つ鉄骨トラス(大臣認定部材)で構成され、施工に当たって、大屋根全体を大小13のブロックに分割して、①地上構台上でのトラス組立、②大型クレーンによるトラスの架設、を繰り返すことで大屋根骨組を構築しました。

 

鉄骨トラスの組立

 鉄骨トラスの組み立ては、駅南の広場に設置した構台(20m×62m)上で行いました。組立作業は構台上に設置したクレーン(16tラフタークレーン)を用いて、枠組足場や支柱等の仮設材で鉄骨部材を支持しながら進めました(写真-2)。トラスは図-1に示す通り大小のトラスブロックに分割し、計画した架設順序に従って組み立てました。

 

鉄骨トラスの架設

 組み立てられた鉄骨トラスブロックは、電車運行時間外の深夜に構台から駅上空の所定位置まで大型クレーン(550tオールテレーンクレーン)を用いて移動し、架設しました。このクレーンは作業半径50mで27.8tの楊重能力があります。

架設の順序は、4本の柱で安定して支持される大型トラスブロック①を最初に施工することとしました(写真-3)。トラスブロック②、⑤も大型ですが、南北にある2本の柱でしか支持できないため、トラスブロック①よりワイヤーロープで牽引したり、仮受け支柱を設けるなどの補助支持対策を講じました。また、小型ブロックの④-1、④-2を⑤に先行して設置することで、トラスの拘束性を高める工夫をしました(図-2、写真-4)。
大型ブロックの大きさは、クレーンの吊り能力などから決定しています。また、大型ブロックの間を埋める小型ブロックは、駅上空での作業可能時間から、接合可能なジョイント数を算定し、分割数を決定しました。

 

膜屋根の設置

大屋根鉄骨トラスの屋根材として使用する膜材には、ガラス繊維に四フッ化エチレン樹脂コーティング(テフロン®膜)した素材を採用しています。この素材は軽量で耐久性が高く、かつ透光性に優れるため駅ホームを明るく快適な空間にでき、省エネ効果も期待できます。
膜材の大屋根鉄骨トラスへの張り付け(以下、展張)は、長さ約9mの紙管を芯材にしてメガネ巻きにした膜材を大屋根の東西方向中心線上にクレーンにて荷揚げし、それを南北方向へ転がしながら仮留めを行い、展張して行きます(図-3、写真-5)。展張は駅上空での作業となるため、作業足場の確保や転落防止のための安全設備の設置、また、膜の汚れ防止等に充分留意しました。また、電車運行時間外での限られた時間で作業を完了させるため、2~3班の人員配置と施工区分を検討して作業を進めました。

 

おわりに

阪神甲子園球場の玄関口であり、地域の主要ターミナルである阪神甲子園駅では、より便利で快適な駅への改良工事を進めており、今回はその一つである大屋根工事の概要を紹介しました。今後も安全を第一に工事を進め、工事竣工に向け一丸となって取り組んでまいります。

  

工事概要
工事名称 阪神甲子園駅改良工事
工事場所 兵庫県西宮市
事業主体 神戸高速鉄道(株)
設計 阪急設計コンサルタント(株)
監理 阪神電気鉄道(株)
施工 鴻池組・ハンシン建設 特定建設工事共同企業体
工期 平成23年年度~平成28年度(予定)
工事内容

ホーム拡幅、バリアフリー化(EV設置、多機能トイレ設置他)、
東西駅舎改築、大屋根設置

 

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477号(2015年04月01日)