水道用PCタンク覆蓋としてのアルミドーム
打向配水池
九州支店 工事事務所
田中 隆樹
はじめに
福岡県直方市の水道事業は昭和6年に供用が開始され76年が経過しています。現在4カ所の配水池(全容量8,300t)から市内全域に供給していますが、人口増加等による給水不足および水道施設更新の目的で、今回新しくPCタンクを増設することになりました。本号では、上水道施設としてはあまり例のないアルミニウム合金製屋根の施工について紹介します。
写真-1 PCタンク全景 |
アルミドームの特徴
構造用アルミ合金は比重が2.7(鉄の約1/3)、引張強さは150~300N/mm2(鉄の約1/2)であり、比重の割には強度が高いため、ドームなどの大スパン空間構造に適した材料です。特に屋根自体の重量を低減できるため、PCタンク等下部構造への負荷が小さい、架設時に大きな重機が必要とならない等の利点があります。
また、アルミは耐食性が高い金属として知られています。これは、大気中において自然に酸化皮膜が形成されるためです。このため、アルミドーム内外面の塗装が不要となり、維持管理が不要となる利点があります。
アルミドームの概要(図-1)
アルミドームの概要を以下に示します。
- アルミドーム総重量:約16t
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主要材料:A6N01S-T5(骨組材)
A3004P(屋根面材)
SUS304(接合ボルト)
図-1 PCタンク概要 |
アルミドームの架設
アルミドームの架設方法には、大きく分けて以下の3工法が挙げられます。
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各架設工法の特徴は以下の通りです。
- タンク外に十分な施工ヤードが確保されており、一括架設に必要な大型のクレーンが進入可能な場合で、最も合理的な架設工法となります。
- タンク外に十分な施工ヤードが確保できず、一括架設に必要な大型のクレーンが進入不可能な場合に採用されます。ウインチ動作を人力に頼るため、架設時に多くの作業員が必要となります。
- “2”と同様な施工条件であるが、タンク内で地組立が不可能な場合(タンク内に水を残したまま施工の場合、タンク内に障害物がある場合)に採用されます。
当工事では、図-2に示すように、タンク外に十分な地組立ヤードが確保できないこと、一括架設に必要な大型クレーン(360tトラッククレーン)が進入できないこと、タンク底辺付近で内壁が張り出しているため地組立が難しい等の理由により「(3)張出架設工法」(図-3)が採用されました。
![]() 図-2 工事ヤード平面図 |
![]() 図-3 アルミドーム施工要領 |
施工フロー
張出架設工法による骨組組み立て施工では、最終リング接合時のズレが心配されましたが、架設計画の検討を十分に行い、厳しい工場製作精度を確保することにより、無事に現場最終結合が完成しました。
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写真-6 アルミドーム完成 |
おわりに
アルミドームの軽量性や施工性が着目され、既設タンクの老朽化したPC屋根をリニューアルする際にアルミドームが採用される事例が増えています。既設タンクの水を残したままできる工法の開発が期待されます。
工事名称 | 打向配水池築造工事 |
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工事場所 | 福岡県直方市大字山部927番地 |
発注 | 福岡県直方市 |
施工 | 鴻池・I・K建設工事共同企業体 |
工期 | 平成17年9月~平成20年3月 |
工事内容 |
PCタンク工 有効容量 8,600m3 1基 有効水深 9.00m 内径35.00m 屋根アルミドーム工法 場内配管工 φ300~φ600 L=843m ピット築造工 4基 |
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