光るデータコンバータ(LEC)を用いた施工管理手法

第二東名高速道路 富幕地区のり面補強工事

名古屋支店 工事事務所
白井淳裕

はじめに

第二東名高速道路富幕地区のり面補強工事は、第二東名高速道路と東名高速道路を結ぶ引佐連絡路に位置し、長大切土のり面における地すべり補強対策を行う工事です。
当工事の主な対策工は、過荷重状態となった既設アンカーの荷重分担を目的とした追加アンカー(91本)、および地下水位低下を目的とした排水トンネル(L=297m、A=14.3m2)・水抜きボーリング(L=1620m)となります。
図-1に対策工平面図を、図-2に対策工の横断図を示します。
地すべり挙動を示す地山に対しての施工となるため、工事が地山に与える影響の早期把握が、安全上・品質上重要な要素となります。ここでは、そのために採用した計測値の「見える化」について紹介します。

光るデータコンバータ(LEC)とは

光るデータコンバータ(LEC: Light Emitting Converter)とは、任意の計測器から得られた測定値を事前に設定したしきい値で光の色に変換する装置です。光は測定値に応じて5色に発色変化し、そのしきい値は任意に設定することができます。これを利用して計測結果の「見える化」を行い安全管理として用います(図-3)。

当工事でのLEC活用手法

(1)施工時における軸力変動の「見える化」

追加アンカーの緊張力導入では、既設アンカー軸力に悪影響(軸力増加)を与えることが懸念されました。そのため、本工事では軸力変動の早期把握手段として、LECを活用しました。
既設荷重計、および適所に追加した後付型荷重計にLECを接続し、発色のしきい値を5段階に設定し(表-1)、LECを看板に集約、工事関係者が容易に初期状態と現状とを比較できるように工夫しました。
計測結果では、懸念した既設アンカーの軸力増加は確認されませんでした。また、図-4に示す3カ所(青丸で囲んだ部分)では、軸力が5%程度低下しました(図-5)。これは、既設アンカー軸力の再配分が適切になされたためと考えられます。

(2)排水トンネル施工時における地すべり挙動の「見える化」

排水トンネル掘削により、長大のり面の地すべり誘発が懸念されたため、既設アンカー軸力および地表面変位測定における地すべり挙動の「見える化」を行いました。
 

【1】 排水トンネル施工時における既設アンカー軸力の「見える化」

トンネルの掘削に先立ち、トンネルルート上の既設アンカー(20m間隔)のリフトオフ試験を実施し、残存緊張力を把握しました。そのうちトンネル起点側から掘削影響範囲の3測点について後付型荷重計を新規に設置し、LECを接続しました。
トンネル切羽が3測点の中間位置直下に到達した時点でアンカー荷重の収束を確認した後、最後尾の荷重計を順次、前方の測点に移設することにより経済的な計測管理が可能となりました(図-6)。

【2】 地表面変位の「見える化」

トンネルルート上の適所に地表面伸縮計を新設、LECを接続し、地表面変位の「見える化」を行いました。各LECは、5段階の管理値を設定し、坑内の見やすい位置に集約することでトンネルの作業時に地表面の状態が確認できました(写真-1)。
計測結果では、既設アンカーの軸力変化は見られませんでしたが、地表面伸縮計については、1.7mm程度の累積変位が確認されました(図-7)。しかしな がら、管理レベル~(2mm)以内の小さな変位であり、その後収束に向かったことからも、安全上・品質上で問題となる変位ではありませんでした。

おわりに

計測結果を「見える化」することにより、作業員を含む多くの関係者がその変化をリアルタイムに目視確認できる環境を整えることができました。その結果、坑内作業時に斜面の状況を把握できるなど、安全面・品質面における管理の精度をかなり向上させることができました。
今回採用した「見える化」技術は、任意の計測器に接続が可能であり、また誰にでも分かりやすい表示となることから、今後さまざまな用途への応用が可能です。

工事概要
工事名称 第二東名高速道路 富幕地区のり面補強工事
工事場所 静岡県浜松市北区引佐町奥山~谷沢
発注 中日本高速道路(株) 東京支社 浜松工事事務所
施工 (株)鴻池組
工期 平成22年6月~平成24年1月
工事内容 工事延長 : 400m
排水トンネル工 : L=297m
水抜きボーリング工 : 総延長L=1,620m (20~50m 33本)
グラウンドアンカー工 : 総延長L=3,097m(25~43.5m 91本)
路側変状対策工 : 4,570m (717本)

本誌掲載記事に関するお問い合わせは、管理本部 広報までお願いします。なお、記事の無断転載はご遠慮ください。

 

462号(2011年07月01日)