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セセッション様式を伝える、
モダンな外観
鴻池組旧本店として、事務室や社交サロンの役割を果たした木造洋館。外壁は白いモルタル塗りで、ライン状に配された紅白のタイルがアクセントを添えています。モダンな外観は、大正時代に流行したセセッション*と呼ばれるスタイルです。玄関は北側に面し、南側にはかつて伝法川が流れていました。2階のベランダからは、川を行き交う船を眺めることができました。
設計を久保田小三郎が手がけ、1910年(明治43年)に完成。1914年(大正3年)に、鴻池組の創業者・鴻池忠治郎の後を継いだ初代社長・忠三郎によって、外装および内装の一部が改装されています。洋館は第2次世界大戦の空襲を免れ、1968年(昭和43年)まで本店としての役割を担いました。
*セセッション Secession(英)
19世紀末からドイツ・オーストリアで起こった絵画・建築・工芸の革新運動。過去の芸術様式から分離して、生活や機能と結び付いた新しい造形芸術の創造をめざしました。「分離派」とも訳されています。
孔雀と薔薇が舞う、
ステンドグラス
正面玄関の趣ある扉を開けると、和と洋が絶妙に調和した空間が広がります。左手には、2羽の孔雀と薔薇の花が描かれたステンドグラス。木内真太郎が製作を担い、孔雀は鴻池組ゆかりの鳳凰にちなんだものと言われています。天井にはキューピッドの彫刻が施され、訪れる人をやさしく見守ります。
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薔薇と孔雀をモチーフにした
ステンドグラス -
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洋館1階事務室
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洋館正面玄関には
社章「マルキタ」のステンドグラス -
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玄関ホール天井にキュービッド彫刻
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玄関ホール

大正アール・ヌーヴォー香る応接室
2階へ続く階段を登ると、東側に応接室、廊下をはさんで社長室と和室があります。応接室の暖炉や調度品の装飾はアール・ヌーヴォー**様式で、彫刻家の相原雲楽が手がけたものです。暖炉の両側には、折り畳み式のベッド2床が格納され、寝室としても使用することができました。ベランダの端には英国製の水洗式トイレが設置され、当時としては非常に希少なものでした。
**アール・ヌーヴォー Art Nouveau(仏)
19世紀松から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパを中心に広がった国際的な芸術運動・様式です。花、植物などのモチーフや自由曲線の組み合わせによる装飾性が特徴で、建築、工芸品、グラフィックデザインなど多岐にわたる分野に影響を与えました。
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洋館2階応接室の暖炉や調度品の装飾はアール・ヌーヴォー様式
建築に携わった
3人の匠
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くぼた こさぶろう久保田 小三郎(1868~1934)
洋館・和館の設計を行う。建築家・辰野金吾に師事し、日本銀行本店、旧大阪図書館の施工に携わる。アール・ヌーヴォー建築として有名な旧松本健次郎邸の工事監督、和館設計も務めた。
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あいはら うんらく相原 雲楽(1878~1954)
洋館・和館の装飾・彫刻を手がける。彫刻家・高村光雲に弟子入りした後、住友家に認められ、住友本家および須磨別邸、住友銀行、旧大阪図書館、旧松本健次郎邸、大阪倶楽部などに多くの彫刻作品を残している。
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きうち しんたろう木内 真太郎(1880~1969)
洋館玄関ホールのステンドグラスを制作。日本最初のステンドグラス作家・宇野澤辰雄の弟子として学んだ後、大阪で独立。旧松本健次郎邸など、鴻池組が施工した複数の工事に関わっている。