技術広報誌ET

技術広報誌ET 2017年発刊号

制振ダンパーとCFT柱で
高い居住性と安全性を確保した
ホテルの建設

485号(2017年04月01日) ユニバーサルシティ駅前プロジェクト 大阪本店 工事事務所 甲斐 康宏 / 本社 設計本部 志摩 好宜

はじめに

本工事はユニバーサルシティ駅直結の最高のアクセスとウォーターフロントの眺望に恵まれた敷地に、390室のホテルとブライダル施設を建設するプロジェクトです(図-1)。工事の進捗に合わせて姿を見せる独特な外観は、大阪を代表するアミューズメントエリアとなった此花西部エリアの景観に「新たな輝き」を放ち、徐々にその存在感を現しつつあります。現在、平成29年9月末の竣工に向けて施工中です(写真-1)。

図-1 完成予想図

図-1 完成予想図

写真-1 施工中の建物

写真-1 施工中の建物

建築・構造計画

建物は、地下1階、地上17階、搭屋2階、最高部高さ79.02mの高層複合ビルです。地上部の主体構造は鉄骨造で、柱には角型鋼管柱(650角、t=19~45mm)および4面ボックス柱(□-300×500、t=19~45mm)を用い、角型鋼管には設計基準強度(Fc)42~60N/mm2のコンクリートを充填するCFT構造を採用しています。また、制振装置としてオイルダンパーおよび制振間柱を併用して高い耐震性能を確保しています(写真-2、3)。

写真-2 制振間柱設置状況

写真-2 制振間柱設置状況

写真-3 オイルダンパー設置状況

写真-3 オイルダンパー設置状況

基準階(3~13階)はホテル客室として計画され、客室内の中間柱はスレンダーな柱とすることで、間口の有効幅を確保しています。また、客室計画上の妨げとならないようにコア部分にオイルダンパーを、客室PS内に低降伏点鋼を用いた制振間柱を配置することで、建物の主要な構造部材の損傷を軽減します(図-2、3)。

図-2 客室階床伏図

図-2 客室階床伏図

図-3 断面図

図-3 断面図

CFT柱の施工

当社では、他社に先駆けてCFT充填コンクリートの研究開発に取り組み、多くの施工実績を残しています。当工事においても技術研究所支援の下、綿密な計画を立て、B1階および16~17階を落し込み工法、1~15階を圧入工法にて施工しました。落し込み工法では、1分間の打ち上げ高さが1.0m以下となるように電動ホッパーによる試験打設を行いました。また、圧入工法では鋼管上部から検尺テープとCCDカメラを挿入し、配管に圧力計を取り付け、打設状況と配管内圧力を常時モニター画面で監視することで、より良い品質を確保し、全8回のCFTコンクリート打設を無事完了することができました(図-4、写真-4~7)。

図-4 CFT圧入タイムスケジュール

図-4 CFT圧入タイムスケジュール

写真-4 落し込み工法による打設

写真-4 落し込み工法による打設

写真-5 CCDカメラによる監視

写真-5 CCDカメラによる監視

写真-6 コンクリート圧入状況

写真-6 コンクリート圧入状況

写真-7 モニターによる遠隔監視

写真-7 モニターによる遠隔監視

おわりに

当工事では、設計部門、施工部門、技術研究所一丸となり、お客様に安心で高品質な建物を提供するために取り組んできました。今後も竣工に向けて安全第一に工事を進めてまいります。

工事概要

工事名称 ユニバーサルシティ駅前プロジェクト新築工事
工事場所 大阪市此花区島屋6丁目417番
発注 エヌ・ティ・ティ都市開発株式会社
設計・監理 (株)鴻池組
施工 (株)鴻池組
工期 平成27年2月~平成29年1月
構造・規模 鉄骨造(一部鉄骨鉄筋コンクリート造)
地下1階 地上17階 搭屋2階
建築面積1,765.05㎡ 延床面積24,103.31㎡

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485号(2017年04月01日)

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