環境にやさしいテルハクレーンを高架工事に採用

谷山高架中村Bℓ新設他   

九州支店 工事事務所 菊地 満紀 / 機材センター 白井 信浩

はじめに 

JR指宿枕崎線は、鹿児島市南部の谷山地区で市街地を南北に分断し、踏切により道路の渋滞が慢性的に発生するなど、都市機能低下の原因となっています。
これらの原因を解消するために、都市計画事業「谷山地区連続立体交差事業(JR指宿枕崎線の市道小松原山田線付近~慈眼寺駅付近高架工事)として、約2.7kmを高架化することになりました。このうち当社JVは、小松原地下道付近から永田川までの全長397mの区間の工事を担当しています。
工事の進捗は、平成27年6月時点で全体工事の93%が完了し、スライドジャッキダウン工法によるPC下路桁の設置完了後、鋼角ストッパー(水平力の下部工への伝達および落橋防止のための部材)および土工区間を施工しています。
JR営業線と道路に挟まれた区間の高架工事の施工にあたり、施工区間の沿道は幅員が狭い上に商店や民家が建ち並んでいるため、いかに通行止めを少なくするかが課題となりました。通常使用する移動式クレーンでは通行止めを伴うことから、施工区間の全域をカバーできるテルハクレーン(1tおよび0.5t吊)を活用して施工を行うことにしました(写真-1、2)。

 

テルハクレーンの設置方法 

当初、テルハクレーンの柱材は、過去の実績に基づいて施工済みの下部構造物にアンカーを埋め込んで固定し、荷重を支える計画としていましたが、テルハクレーンの荷重による構造物への悪影響が懸念されたほか、アンカー部のあと処理(仕上げ、かぶり不足、防水等)などの問題がありました。そこで、工程を見直し、構造物周辺の埋め戻しを先行することで柱材の軸力を地盤で受けることにしました。さらに、柱材の水平方向の固定は、下部構造物にアンカーを使用せず鋼製バンドを巻きつけて固定する構造としました(写真-3、4)。
検討段階で下部構造物に作用する応力を解析し、通常使用する範囲で起こり得る作業時荷重、地震時荷重、風荷重作用時における発生応力が小さく、充分に安全であることを確認しています。
 

 

テルハクレーン採用の効果 

鉄筋組立時のテルハクレーンの活用例を紹介します。資材の集積ヤードから、ロットごとに使用分のみを揚重し、施工場所まで運搬します(写真-5、6)。各構造物の工種ごとに使用する資材を効率よく運搬できるため、各所において同時進行で施工を行うことができるとともに、揚重設備の移動などの手間も生じないことから、工期短縮にも大きく寄与しました。また、運搬のみではなく、太径鉄筋の間配りにも活用することで(写真-7)、組立作業の負荷の低減および効率向上を図ることもできました。
通常は、狭隘な沿道に移動式クレーンを設置するため、長期間にわたる通行止めを余儀なくされるのに対し、テルハクレーンの設置により通行止めを最小限にし、かつ第三者に対する安全性が向上しました。また、テルハクレーン自体は騒音・振動がほとんどなく、排気ガスの発生もないことから環境に優しく、周辺の商店や民家への影響を大幅に低減できました。
 

 

 

その他の工夫 

本工事は作業ヤードが狭隘であることに加え、営業線に近接しており、これまでも様々な工夫を凝らして施工を進めてきました。例えば、橋脚基礎杭の鋼管ソイルセメント杭の打設においては、鉄道の営業していない夜間の限られた時間内で大型の杭打機を使用して施工する必要があったため、杭打機の足元を水平に保ち、かつ、現道に損傷を与えることのないようにユニット化した重機足場架台を製作・使用し、機械設置にかかる時間を短縮し、かつ規制時間内で道路開放できるようにして作業効率の向上を図りました(写真-8、9)。 

  

おわりに 

本工事のように移動式クレーンの設置が困難な狭隘な現場では、テルハクレーンは、第三者への環境負荷低減、安全性および作業効率の向上が大いに期待できる設備です。転用や標準化等によりコスト面における改善を図ることで、同様の工事での適用が増えると予想されます。
今後も、本工事で採用したような、限られた施工条件に適合する創意工夫を凝らし、周辺環境保全を最大限に考慮した安全かつ効率的な施工に取り組んでまいります。

 

 

工事概要 
工事名称 谷山高架中村Bℓ新設他
工事場所 鹿児島県鹿児島市東谷山地内
発注者  九州旅客鉄道株式会社
施工者 鴻池・丸福 共同企業体
工期

平成25年6月~平成27年8月 

工事概要

工区延長 397m
鋼管ソイルセメント杭 1式 ラーメン高架橋 3基 T桁 4連
PC桁 2連  下路桁 1連 床版桁 1連 橋台 1基 橋脚 5基
プレキャストダクト 1式 壁高欄 1式

 

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478号(2015年07月01日)