軽量盛土材による桟橋上の埋戻し

道頓堀川水辺整備

大阪本店 工事事務所
冨留宮 直

はじめに

大阪の繁華街「ミナミ」の中心部を流れる道頓堀川は、大阪を代表する河川であり、都心部に残された貴重な水辺空間です。夜になると川沿いに映し出される色 とりどりのネオンが象徴的で、大阪の観光名所のひとつにもなっており、多くの観光客が訪れ人々に親しまれてきました。しかし、現在の道頓堀川は治水対策の ために護岸が嵩上げされたことや、水質の汚濁などによって、人と川は見ることでしかつながりをもたない存在となってしまいました。
そこで近年水辺が本来持つ「うるおい」や「やすらぎ」といった機能が注目される中で、道頓堀川においては川を「まち」の構成上重要な空間としてとらえ、大阪市が掲げるまちづくりの目標「水の都・大阪」再生に向け、この道頓堀川の水辺に川を身近に感じることができるような遊歩道を整備し、その潤いある新鮮な 空間によって都市魅力の向上に寄与することを目指し「道頓堀川水辺整備事業」がスタートしました(図-1)。

遊歩道の構造

遊歩道の基礎となる下部構造は、従来の舟形護岸の構造を一部利用しながら新たに鋼管杭を打ち込み、その上に受桁と床版を載せた耐震性を考慮した桟橋構造となっています。
遊歩道は上下段の2段構造となっており、上段(OP+3.25m)部は、治水上必要な堤防の高さを確保しつつ沿川空間・建物へのアプローチがしやすいように、下段(OP+2.35m)部は、水面に近い高さでの散策を重視した空間として設定されています(写真-1、2、図-2)。
なお、河川水位は潮の干満により変化しますが、道頓堀川水門・東横堀川水門により一定の範囲内で制御されています。
上段遊歩道部の埋戻し材には、桟橋の安定性を考慮し、軽量であるEPSブロックおよび人工軽量骨材を使用しました。

EPS工法(発泡スチロール土木工法)

EPS工法とは、大型の発泡スチロールブロックを盛土材料として積み重ねていくもので、材料の超軽量性(土やコンクリートの1/100)、耐圧縮性、耐久性および積み重ねた場合の自立性などの特徴を有効に利用する工法です。
この工法は軟弱地盤上や地滑り地の盛土、急傾斜地盛土、構造物の裏込めなど荷重軽減や土圧低減をはかる必要のあるところに適用できます。
発泡スチロールブロックの積み重ねは人力で行えるため、大型機械の使用できない場所でも施工が可能です。ブロックは現地で簡単に切断できるため、地形に対応した加工が容易です。また、発泡スチロールは水と結合しない撥水性の材料であるため、長期間の水浸しにあっても水による影響は受けません。
当現場では遊歩道上段部の埋戻し材として、単位体積重量0.20kN/m3のEPSブロックを使用しました。H.W.LがOP+2.65mであるため、それ以下の部分には浮力対策型ブロック(中空)を、以上の部分には通常のEPSブロックを使用しました(写真-3、4)。

人工軽量骨材

人工軽量骨材とは、天然の岩石である膨張頁岩などを原料として、これを人工的に焼成・発泡させて製造した自然に優しい人工軽量盛土材です。骨材の内部には 空隙を保有し、表面が緻密なガラスで覆われた軽くて強い骨材です。軽量ですが標準締固めによる施工では、単位体積重量が11kN/m3であり、水に浮くことはありません。
当現場では遊歩道上段部の埋戻し材として、床版ブロック上部を除く場所を中心に使用しました(写真-5)。

おわりに

EPSブロックおよび人工軽量骨材を使用することにより、新設桟橋構造の遊歩道の安定性を損なうことなく、無事施工できました。この事例が軟弱地盤など通常の盛土・埋戻しが困難な場所での施工の参考になれば幸いです。

工事概要
工事名称

道頓堀川水辺整備工事(道頓堀橋~戎橋間)並びに戎橋改良工事-1

戎橋架替その他工事-1~4

工事場所 大阪市中央区宗右衛門町~道頓堀1丁目
発注 大阪市建設局
施工 (株)鴻池組・中林建設(株)共同企業体
工期 平成15年1月~平成20年9月
工事内容

旧戎橋撤去一式

遊歩道整備 126m(EPS 42m3、人工軽量骨材 144m3

新戎橋橋面および戎橋南北土工部石張り 一式

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447号(2008年10月01日)