営業線直下のアンダーパス築造

JR武蔵野線

東京本店 工事事務所 山川敦也
/ 村下富雄

はじめに

旧国鉄時代の1973年に、貨物線として開業したJR武蔵野線は、現在では、首都圏を環状に結ぶ旅客線として重要な役割を担っています。このJR武蔵野線の直下を貫く埼玉県道葛飾吉川松伏線は、東京都葛飾区から埼玉県を南北に結ぶ幹線道路として計画されており、この道路の開通により、東京外郭環状道路へのアクセスも良化し、市街地における大型車等による慢性的な渋滞も解消されるなど、住民の安全性・利便性が向上します(写真-1)。
当工事では、この道路のJR武蔵野線直下部を含んだ延長約70mについて、非開削工法の「HEP&JES工法(※)」で施工を行っており、その概要を紹介します。

※「HEP&JES工法」:鉄道ACT研究会登録工法

HEP&JES工法の概要

当工事のJR武蔵野線直下のボックス部築造では、既存の交通施設の運行に支障を与えず、非開削で安全に線路下立体横断構造物を構築する技術として、施工実績を着実に伸ばしている「HEP工法」および「JES工法」が、採用されています。

HEP工法

HEP工法は、線路下横断工事を精度よく安全に施工するエレメント敷設工法として、その性能が認められています。到達側に設置したけん引装置で、エレメントとその先端に直結した掘削装置をPC鋼より線で到達側に引き込む工法です(図-2、写真-2)。

HEP工法の特長

HEP工法におけるけん引の方法

1本目の基準エレメントは、水平ボーリングによって削孔した穴にPC鋼より線を挿入した後、このPC鋼より線に掘削装置とエレメントを接続して、到達側から油圧ジャッキでけん引します。2本目以降のエレメントのけん引は、先行するエレメントと一緒に引き込んだPC鋼より線を使って順次行います(図-3)。このため、2本目以降については水平ボーリングは必要ありません。

JES工法

JES工法は、線路下横断構造物を短期間に安全に構築する工法として高い評価を得ています。軸直角方向に力の伝達可能な継手を有した鋼製エレメントを継手相互で嵌合させ、本体利用することにより、非開削で箱形や円形等の構造物を延長に制約されずに容易に構築することができます(図-4)。

JES工法の特長

JES工法継手部の構造

JES工法は、部材に発生する引張力をエレメント間の継手により伝達する構造としています(図-5)。(1)継手部が十分な強度を有しています。(2)活荷重として作用する繰返し載荷の影響を考慮しています。(3)施工時に十分な遊びのある形状とし、挿入後に継手部の空隙にグラウトを充填することで固定します。

施工状況

当工事では、エレメントけん引延長は約30mで、4本のエレメントを接続しながらのけん引となります。図のように、まず、基準エレメントをけん引し、その両側の上床エレメントを順次けん引していきます。HEP&JES工法の施工は、平成19年10月より開始しましたが、現在、上床およびダミーエレメントのけん引を行っています(図-6)。軌道面への影響は少ない工法ですが、当工事では軌道の自動計測により、リアルタイムで軌道の状況を把握しながら施工しています(写真-3)。

おわりに

HEP&JES工法の施工は、来春まで続きますので、慎重かつ安全な施工を心がけていきます。

工事概要
工事名称 武蔵野線吉川・新三郷間こ道橋新設
工事場所 埼玉県吉川市木売
発注 東日本旅客鉄道株式会社 東京工事事務所
施工 鴻池組・鉄建建設 共同企業体
工期 平成17年12月~平成21年10月
工事内容

函体(鋼)エレメント工…2,020m

函体(RC)…2,002m3、地盤改良工…1式、

掘削工…16,500m3、掘削土留工…1式、

薬液注入工…1式、仮設桟橋工…1,020㎡、

軌道計測工、工事用防護工 他

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445号(2008年08月01日)