高層建物・免震建物における地震観測ネットワーク

保有技術の紹介

観測建物

建築物の振動特性に関する基礎データの収集や導入した構造技術の評価、耐震・耐風設計法の検証などを目的として、三大都市圏の高層建物や免震建物で地震や強風時の建物の振動観測を実施しています。1989年の開始以来、現在は表-1の9建物で、観測を実施しています。これらの建物は当社が設計・施工したものであり、高層RCや免震・制振などの新技術が導入されています。

検討事例

これまでに観測記録をもとに多くの検討を行いましたが、以下に数例紹介します。
図-1は設計時の解析モデルをもとに作成したモデルにより行った高層建物の解析の一例です。設計時には考慮されていない非構造部材等の影響により設計時の モデルは実建物の周期と少し異なりますが、それらを調整することにより、観測記録とよく一致しています。
図-2はすでに観測を終えた大阪の事務所ビルでの検討例です。複数の建物間をオイルダンパーで連結した建物ですが、観測記録をもとにダンパーをなくしたモデルについても解析を行い、ダンパーの効果を確認しました。ダンパーにより棟間変位が小さくなっており、最大値も60%程度になっています。
免震建物においても、建物の振幅レベルによる加速度低減効果や固有周期の変化などが確認されています(鴻池組技術研究報告Vol.16 2006参照)。

観測の継続

近年、E-ディフェンス(独立行政法人防災科学技術研究所の大規模振動台)において実スケール建物の振動台実験も行われていますが、わずかな事例に限られます。また、地盤や杭など振動台実験では考慮しづらい項目も多くあり、実建物における観測は実現象の解明には不可欠なものです。今後も実建物における観測を続け、構造物の振動特性の把握・シミュレーションによる検討などを行っていく予定です。

(問い合わせ先) 技術研究所 井川 望 TEL.029(857)2000

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440号(2008年03月01日)