高層事務所ビルにおけるCFT充填コンクリートの施工

本町南ガーデンシティ

大阪本店 工事事務所 安居院徳重
/ 小川雅史

はじめに

平成23年4月に「本町南ガーデンシティ」が、御堂筋の新しいシンボルとして誕生しました。平成20年2月に旧鴻池ビルの解体工事から始まった当プロジェクトは、38カ月の工期を経て完成を迎えました(写真-1)。
建物は、地下2階、地上26階、最高部高さ111.1mの高層オフィスビルです。地下部では既存躯体の仮設利用や逆打ち工法など、環境に配慮した施工法を採用しました(ET456号参照)。また、地上部の主体構造は鉄骨造で、柱には円形鋼管柱(950~800φ、t=70~19mm)および4面ボックス柱(600角、t=50~19mm)に設計基準強度(Fc)42~60N/mm2のコンクリートを充填するCFT構造が採用されています。
本号では、圧入高さが100mを超える難易度の高いCFT充填コンクリートの施工について紹介します。

建物概要

4~24階までの基準階は貸事務室として計画され、CFT構造の特長を生かして幅約60m、奥行き約17mの広々とした無柱空間を確保し、オフィスレイアウトの変更に対応しやすい空間となっています。また、大地震時に建物に作用するエネルギーを吸収させる制震ブレース(アンボンドブレース)を各階のコア廻りに配置し、建物の主要な構造部材の損傷を軽減しています(写真-2、図-1)。

CFT造の概要

鋼管柱へのコンクリートの充填は、地下1階から地上24階までであり、地上からの圧入高さは最大で約101mとなりました。
充填コンクリートの強度は、11階に設けた圧入口より下部がFc60N/mm2、上部がFc42N/mm2です(図-2)。打設方法は、地下部がブーム式コンクリートポンプ車を用いたフレキシブルホースによる「落し込み充填工法」で、地上部は「圧入工法」を採用しました。また、地上部については、3層に分割して圧入施工を行いました(図-2)。
本工事に用いたコンクリートは鴻池組大阪本店が大臣認定を取得したもので、当社技術研究所支援の下、充填コンクリートの調合を決定しました。施工にあたっては、室内試験練りの他、実機試験を行いフレッシュ性状の経時変化などを確認しました。

圧入工法による施工

地上部コンクリートの圧入施工は、1階、11階、20階の各フロアにスライドバルブ式の圧入治具を設けて行いました(写真-3)。今回、圧入高さが高いため配管に圧力計を取り付け、配管内圧力と1分間あたりのストローク数を常時計測することで異常の早期発見に努めました(写真-4)。また、鋼管上部から 検尺テープとCCDカメラを挿入して、圧入速度や充填状況を確認しながら圧入施工を行いました(写真-5)。
今回の圧入施工では、垂直・水平を合わせて最大で150mを超える配管長さになりました。配管に作用する圧力は、計算の結果では、3層目で9MPaでしたが、1分間の打ち上げ高さが1.0m以下となるようにポンプの圧送ストロークを調整しながら慎重に施工した結果、計画値どおりの圧力に抑えることができました。
また、4面ボックス柱は「内ダイアフラム形式」、低層部の円形鋼管柱については「通しダイアフラム形式」ですが、ダイアフラム中央の打設孔や4隅の空気 抜き孔からCCDカメラにより、コンクリート流出状況を常時モニター画面で監視することができたことから、高層部への圧入においても品質管理のさらなる向上につながりました(写真-6)。

おわりに

当社では、早くから高強度コンクリートやCFT充填コンクリートの研究開発に取り組み、多くの施工実績を残していることから、(社)新都市ハウジング協 会の施工技術ランクでSA(最上位)にランクされています。当工事においても技術研究所支援の下、建築・機械担当職員と協力会社(コンクリート工・ポンプ工)による専門チームを組織し、綿密な計画と管理を行った結果、全15回の打設を無事完了することができました。
今回得られた貴重な経験やデータを、今後予定されている同種工事やCFT-R(鉄筋入りCFT)造の工事へ展開したいと考えています。

工事概要
工事名称 (仮称)本町南ガーデンシティ新築工事
工事場所 大阪市中央区北久宝寺町3丁目27番1号他4筆
発注 積水ハウス(株)
設計・監理 (株)日建設計
施工 鴻池・大林共同企業体
工期 平成21年3月~平成23年3月(新築工事)
構造規模 鉄骨造(CFT造)、 一部SRC造・RC造、 地下2F 地上26F
延床面積46,801.30m2、 建築面積1,914.61m2

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461号(2011年04月01日)