大阪平野で予想される直下型地震に対する研究会

大阪本店 建築設計部
太田寛

はじめに

大阪平野近辺には多数の活断層が存在します。その中でも上町断層帯の活動度は高く、近い将来に地震が発生する可能性が高いことが近年の研究で分かってきました。また、発生する地震動は法律で定められた大地震時の地震動(数百年に一度、極めて稀に発生する地震動)の大きさを越えることが予測されています。

 

研究会の概要

このような状況の下、(社)日本建築構造技術者協会(以下、JSCA)関西支部が中心となり、「大阪府域内陸直下型地震に対する建築設計用地震動および設計法に関する研究会」が平成21年11月に立ち上げられました。研究会には、本年4月現在で55の機関や企業が参加しています。研究会の目的は、上町断層帯地震等の内陸直下型地震に対する設計用地震動と耐震設計法の基本的な考え方を提示することで、大阪府域を32ゾーン(大阪市域は6ゾーン)に分割して検討を進めています。具体的な検討は学術委員(学識経験者)およびJSCA委員(構造設計実務者)で構成される専門委員会が行っています。また、専門委員会の下に5つの作業部会(地震動、解析法、RC造、S造、免震構造)が設けられ、分野ごとに検討を進めています。

当社の活動

当社は専門委員会に参画し、実務者の立場で全般的な検討を行うとともに、RC造の設計法を検討する作業部会で活動しています。最新の研究成果の収集と分析および解析的検討などにより、法令を超えるレベルの内陸直下型地震動に対する耐震設計手法の検討を行っています。

今後の予定

東日本大震災により、建物の安全に対する関心は以前にも増して強くなっています。現在、研究会では上町断層帯地震動に対しての検討がほぼまとめられたところですが、引き続き他の断層帯地震動を検討することで、建物の安全性向上に寄与したいと考えています。


<参考文献>
多賀謙蔵他:「大阪府域内陸直下型地震に対する建築設計用地震動および設計法に関する研究会」 成果中間報告;Structure、pp.80-83、2011年4月

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462号(2011年07月01日)