ニュース

水素燃焼による高温過熱水蒸気を活用した

有機フッ素化合物(PFAS)の分解処理技術を共同開発

2023年09月04日 リリース

株式会社鴻池組(本社 大阪市中央区 代表取締役社長 渡津弘己)と中外炉工業株式会社(本社 大阪市中央区 代表取締役社長 尾崎 彰)は202110月より、鴻池組が保有する粉末状の活性炭(粉末活性炭)にPFASを吸着させて環境水等を浄化する技術と中外炉工業が保有する水素燃焼による高温過熱水蒸気技術を活用し、有機フッ素化合物(PFAS)の分解処理技術の共同開発を進めています。この度、911日から大阪工業大学 大宮キャンパスで開催される「第34回 廃棄物資源循環学会 研究発表会」(主催:一般社団法人 廃棄物資源循環学会)において、共同開発の成果の一部を発表します。

近年、PFOS(ピーフォス)やPFOA(ピーフォア)といった有機フッ素化合物(PFAS(ピーファス);per- and poly- fluoroalkyl substances)による環境水や土壌の汚染に注目が集まっています。

鴻池組は河川や地下水といった環境水に含まれるPFASを低コストで浄化するため、粉末状の活性炭(粉末活性炭)にPFASを吸着させて環境水等を浄化する技術の開発を進めています。PFASは難分解性の化学物質であるため、粉末活性炭に吸着させたPFASは、最終的には、適切かつ確実に分解処理する必要があると考えています。

環境省が令和49月に策定した「PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」(以下、「技術的留意事項」と称します)では、PFOSPFOAの分解処理方法として約1,000℃以上(約1,100℃以上を推奨)の焼却処理が想定され、分解効率(99.999%(ファイブナイン)以上)や管理目標値などの要件が示されています。

鴻池組と中外炉工業は、この「技術的留意事項」を満たし、従来の処理方法よりも環境負荷を低減させた、PFASの新たな分解処理技術として、水素を燃焼させて生成する1,100℃を超える高温の過熱水蒸気を活用した手法の開発を進めています。なお、過熱水蒸気は沸点以上に加熱された水蒸気で、1,100℃を超える高温の過熱水蒸気はダイオキシン類やPCBといった汚染物質も熱分解することが可能であり、高温水蒸気分解法としてフロン類破壊技術としても活用されています。

PFASを分解するための高温過熱水蒸気を生成させる手法として、中外炉工業が保有する「水素燃焼式過熱水蒸気発生技術」を採用しています。これは、水素と酸素を水素バーナーで燃焼させて生成する高温の水蒸気を活用するもので、①最高1,600℃までの高温が実現可能、②燃料燃焼由来CO2の排出がゼロ(クリーンな燃焼技術)、③排ガス量が極めて少量(排ガスを急冷させると過熱水蒸気は水(液体)になるため)、④水素バーナーから液体、スラリーの供給が可能(燃焼火炎に直接供給)、などの特徴を有しています。

PFAS分解処理技術の共同開発にあたっては、水素バーナーを装着して所要の滞留時間を確保できる過熱水蒸気分解炉、高温の排ガスを急冷するスクラバー(クエンチャー)、炉内の負圧を維持する吸引ファン(排風機)等からなる「水素燃焼式高温過熱水蒸気分解処理試験装置」(写真-1)を新たに作製しました。

試験装置の主な仕様は、水素バーナー燃焼容量:35 kW(約30,000 kcal/h)、炉内寸法:φ400 mm×L 1,585 mm、炉内温度:最大1,250℃、液体・スラリー供給量:2.5 kg/h(常用)、炉内圧力:0-0.3kPa程度(負圧制御)、燃焼ガスの滞留時間:2秒以上となっています。

上記の試験装置を用いて、過去に使用されていた泡消火薬液由来のPFOS等のPFASを粉末活性炭に吸着させて作製した「PFAS吸着粉末活性炭スラリー」の処理に関して実証試験を行いました。その結果、泡消火薬液に主に含まれているPFOSの分解効率が「技術的留意事項」の要件である99.999%(ファイブナイン)以上であることを確認しました。この結果、水素燃焼による高温過熱水蒸気を活用して、粉末活性炭に吸着したPFASが適切に分解処理できているものと判断しています。

実証試験の詳細な結果については、911日から大阪工業大学 大宮キャンパスで開催される「第34回 廃棄物資源循環学会 研究発表会」(主催:一般社団法人 廃棄物資源循環学会)において発表します。

鴻池組と中外炉工業が共同開発している「水素燃焼による高温過熱水蒸気を活用した有機フッ素化合物(PFAS)の分解処理技術」は、有害化学物質の熱分解処理においてもCO2排出量を低減し、将来的なカーボンニュートラルの達成に寄与し得る技術と考えております。また、あらゆる有機化合物の分解処理に適用可能であるとも考えており、共同開発をさらに強力に推進してまいります。

以 上

関連記事(2023年9月22日追記)

第34回 廃棄物資源循環学会研究発表会にて発表

ニューストップへ