大口径場所打ち杭施工における作業効率・安全性の向上

金沢シーサイドライン   

東京本店 工事事務所 木下 眞一 

はじめに

 金沢シーサイドラインは、横浜市の新杉田駅と金沢八景駅を結ぶ第三セクターが運営する高架橋形式の新交通システムです。平成元年に仮駅で暫定開業しましたが、駅利用者の利便性向上のため、仮駅より約150m先の京浜急行金沢八景駅までの延伸事業に平成27年より着手しました。

 当工事では、新駅舎の大口径基礎杭(φ4.5m)全10本の内、京浜急行本線に近接している杭長7.5~22.5mの6本を施工しました。鉄道への影響を抑えるためにケコム工法(図-1)で鋼製ケーシング式立坑を築造し、その立坑内に鉄筋を組み立て、コンクリート打設を行うことで基礎杭を施工しました。この大口径の鋼製立坑を築造できる全回転型立坑構築機は特殊なもの(写真-1)であると同時に、乗降客58,000人/日の金沢八景駅前での施工であり、工事関係者や第三者から注目される工事でした。工事にあたっては営業線や第三者の安全に配慮した施工および坑内における鉄筋組立とコンクリート打設時の安全・品質を確保する工夫が求められました。

 

鉄筋組立の工夫

場所打ち杭における従来の鉄筋工事は地組みした鉄筋籠をクレーンで投入・設置しますが、鉄筋量が最大で100tにも達し、地組み作業自体が困難であること、また地組みしてもクレーンによる吊り込み作業が困難であったことから、立坑内で人力組立を行いました。

 人力組立に当っては円形のケーシング立坑内での作業を踏まえた組立精度とかぶりの確保に留意しました。

 鉄筋組立では、鉄筋を支持する山形溝(L-65)と帯筋の間隔を保持する鋼棒(D19 @125)を組み合わせた架台(図-2,写真-2)をケーシングを利用して先行設置しました。帯筋(D32)を架台に固定したあと、主筋(D38~D51)を等間隔に建込み帯筋と緊結固定しました。

鉄筋組立用足場の工夫

当初設計の鉄筋組立用足場は、手摺先行型枠組足場を使用することになっており、鉄筋組立およびコンクリート打設の進捗に応じて足場の設置・撤去が必要でした。立坑深さが最大で24mにも及ぶため足場の設置・撤去に労力を要するほか、類似の深礎杭工事において過去に足場設置・撤去時に災害が発生しており、安全かつスマートな鉄筋組立用の足場が求められました。そこで、建築物の外壁補修に用いられる移動式昇降足場「リフトクライマー」を基礎杭用に改良して使用しました(図-3,図-4,写真-3)。これにより、足場の設置・撤去に掛かる労力を大幅に軽減することができました。

 

コンクリート打設足場の工夫

深礎杭における従来のコンクリ-ト打設足場は、帯筋またはケーシングに固定した角鋼管等の鋼材上に足場板を配置した簡易足場で、コンクリ-ト打設面の上昇に伴い盛り替え作業が発生します。今回、最大320m3の大量のコンクリ-トを1回で打設する計画であったため、盛り替え作業を伴う簡易足場を改善する必要がありました。

 そこで、水上の作業やレジャー施設の支持足場として利用されている組立式浮桟橋のピアフロート(写真-4,図-5)をコンクリ-ト打設足場に採用しました(写真-5)。

 これにより、打設足場の盛り替え作業が不要となり、円滑なコンクリ-トの連続打設が可能となりました。ピアフロートは作業足場としての機能を十分に発揮し、安全とコンクリ-トの品質確保を両立することができました。

おわりに

本工事は直径4.5m、最大杭長22.5mにも及ぶ場所打ち杭を、稀有な施工機械を用いたケコム工法により掘削、構築する工事でした。近接した営業線に影響を与えることなく無事に工事を完了することができ、この場を借りて、横浜市をはじめ、京急電鉄、その他の工事関係者の方々に謝意を表します。今回の杭構築時の作業効率および安全性の確保に関する工夫は、同種工事の参考になると期待しています。今後もそれぞれの工事の状況に応じて改善および創意工夫することにより、安全かつ円滑、さらに高品質な施工に取り組んでいく所存です。

 

 工事概要 
工事名称 金沢シーサイドライン延伸工事(その2)他
工事場所  神奈川県横浜市金沢区瀬戸17番地~19番地
発注者 横浜市道路局
施工者

鴻池・長野建設工事共同企業体

工期 平成27年1月~平成28年1月
工事内容

・鋼製ケーシング式立抗築造(φ4,500)ケーシング長10.6m~26.8m(6本)

・大口径場所打ち杭(φ4,500)杭長 L=7.5m~22.5m(6本)

・立抗蓋(路面覆工)設置 6箇所

・仮囲工(h=3m)設置280m,撤去270m 

・京急電鉄擁壁の計測工 一式

 

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482号(2016年07月01日)