大規模リゾートホテルのリニューアル計画
沖縄残波岬ロイヤルホテル
東京本店 建築設計部
尾畑 毅
はじめに
昭和63年にオープンした沖縄残波岬ロイヤルホテルは、施設の経年劣化と共に、社会的要因や機能的要因によりリニューアルが必要となりました。また、オープン当時は、沖縄西海岸の大型リゾートホテルが10カ所程度であったのに対して、13年経過後の平成12年には2倍以上に増加したこともあり、経営戦略上新たな展開が必要となりました。
建物を維持していく上で、5~7年で部分的なリニューアル、10年を目処に大規模なリニューアルを行い、10~15年で隠蔽部・機器類の設備改修を行うのが一般的な考え方です。そこで、平成12年に九州・沖縄サミットが開催され、当ホテルがEUの宿泊ホテルに決定したことを契機に、大規模リニューアル計画を立案し、以降継続的にリニューアルを進め、合わせて経営の効率化と経営戦略の見直しを図ることとなりました。
本号では、V期にわたって行われたリニューアル計画および実施状況の一部を紹介します。
写真-1 ホテル棟と増築チャペル |
デザインコンセプト
オープン当時、沖縄では地中海リゾート型のデザインが大半を占め、その後も同じコンセプトで大型リゾートホテルの建設が進められてきました。これまでのホテルとの差別化を図り、近年注目を集めているアジアンリゾートをテーマに採り入れデザインを一新しました。
サミット以降、アジアンテイストを採り入れたデザインのホテルが増加することとなります。当ホテルのリニューアルコンセプトは、その先駆けとなったと言えます。
近年のリニューアルでは、沖縄でも主流となりつつあるアジアンテイストに、さらに琉球テイストを融合させることにより、沖縄でのより新しいデザインの形を生み出しています。
新規経営戦略に即した施設の構築
沖縄県内の他のリゾートホテルでは、ハワイ・オーストラリア等の海外リゾートウエディングにならって事業を展開しています。海外旅行費用の低下に伴い、本土客重視のリゾートウエディング事業では、ホテルの集客増加が期待できないことから、当ホテルでは顧客ターゲットを県内利用客に絞り、婚礼事業へ参入することとなりました。
県下有数の収容人員数を誇るロイヤルホールの性能向上を計り、利用頻度の低いシングルルームを婚礼施設として生まれ変わらせ、チャペルを増築しました。
既存施設の利用効率アップと、新しい施設の構築により、新規事業を展開し収益向上を図る新しい形のリニューアル事例です。
![]() 写真-2 客室のリニューアル |
![]() 写真-3 チャペルの増築 |
設備計画の改善
当ホテルは、新築当初からコージェネレーションを導入し、経済性にも配慮した設計を行っています。しかし、景気の低迷などの社会的変化に対応するため、一層効率的な施設へ変貌することが必要となってきました。
中水槽の新設により、浄化槽処理水の排水量を低減し、浄化槽処理水の利用率を高めることとなりました。また、貯湯槽の新設により、排熱の利用効率を高め、コージェネレーションの効率化を図っています。
環境的配慮を目指した施設構築と社会的ニーズに即した設備計画への変貌により、ランニングコストの低減と社会貢献を実現しています。
![]() 写真-4 設備関係施設の増設 |
![]() 写真-5 レストランのリニューアル |
おわりに
平成12年にスタートしたリニューアル工事も、今年7月でV期工事が完了しました。これにより一部のレストランを除きリフレッシュを完了することとなります。施設の変貌と若返りに伴い、従業員の意識改革、経営の効率化が進み、収益も開業時を上回る右肩上がりの伸びを実現しています。今後もホテルおよび従業 員の皆様と共に、さらに充実した施設の構築を目指したいと考えています。
建物名称 | 沖縄残波岬ロイヤルホテル |
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工事場所 | 沖縄県中頭郡読谷村字宇座1575 |
発注 | 大和ハウス工業(株)、大和リゾート(株) |
設計・監理 | (株)鴻池組 |
施工 | (株)鴻池組 |
構造・規模 |
RC造+SRC造 地上13階 塔屋1階 建築面積 10,409.37m2 延床面積 46,676.18m2 |
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