改正建築士法に基づく新しい建築士制度について

法改正の経緯

構造計算書偽装問題への対応として、平成18年臨時国会で成立した「建築士法等の一部を改正する法律」は同年12月20日に公布され、2008年11月28日に施行されます。今回の法改正は、2007年6月20日に施行された建築基準法等の一部改正(ET432号にて既報)に続く第二弾と位置付けられ、次の三つの要素から構成されています。

  1. 建築士の資質・能力の向上
  2. 高度な専門能力を有する建築士による構造設計および設備設計の適正化
  3. 設計・工事監理業務の適正化

法改正の概要

(1)建築士の資質・能力の向上

・定期講習の受講義務づけ
建築士事務所に所属する建築士に対し、3年ごとの定期講習の受講が義務付けられます。

・一級建築士試験の見直し
学科試験が現行の4科目から5科目となり、設計製図試験に関しては構造設計や設備設計の基本的能力を確認する出題となります。また、受験資格の見直しも行われ、「所定の学科卒業」という従来の要件から、「国土交通大臣が指定する建築に関する科目を修めて卒業」という要件に変更されます。

(2)高度な専門能力を有する建築士による構造設計および設備設計の適正化

・一定の建築物の設計には、新たに創設される「構造設計一級建築士」、「設備設計一級建築士」による設計或いは法適合確認が必要となり、これらの専門資格者の法適合性証明がなければ確認申請は受理されなくなります。一定の建築物とは、構造設計の場合は高度な構造計算が義務付けられる建築物で、鉄筋コンクリート造高さ20m超、鉄骨造4階建て以上、木造高さ13m超または軒高9m超であり、設備設計の場合は3階建て以上、かつ床面積5000m2超の建築物が該当します。

(3)設計・工事監理業務の適正化

・管理建築士の要件強化
管理建築士には建築士として3年間の実務経験を積んだ後、管理建築士講習の受講が必要となります。

・重要事項説明の義務付け
設計・工事監理契約の締結時に、建築主に対し重要事項について書面を交付して説明を行うことが義務付けられます。

・一定の建築設計などについての一括再委託の全面禁止
3階建て以上、かつ1000m2以上の共同住宅について、委託者が許諾しても、設計・工事監理の一括再委託が禁止されます。

・建築士名簿の閲覧
所属する建築士全員の氏名や実績などを記載した建築士名簿の閲覧を行います。

今後のスケジュール

改正建築士法の施行により、2009年5月27日以降の一定の建築物の確認申請には構造および設備設計一級建築士による法適合チェックが始まります。構造 計算書偽装問題に端を発した一連の法改正は、第三段階として2009年10月に施行される住宅瑕疵担保履行法があり、これによって住宅の購入者保護の強化が図られる予定になっています。

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448号(2008年11月01日)