技術広報誌ET

技術広報誌ET 2023年発刊号

勾配・曲面天井に適用可能な工法の性能証明を取得

508号(2023年1月1日) 天井落下防止工法『帯塗くん』 建築事業総轄本部 技術統括部 岩下 智

はじめに

2011年に発生した東北地方太平洋沖地震では、多くの吊り天井が落下し、かつてない規模で人的・物的な被害が発生しました。これらの被害を防ぎ、社会活動や企業活動等の中断を極力避けるため、『帯塗くん』は開発されました。2017年に一般財団法人日本建築総合試験所(GBRC)より性能証明を取得し、学校や公共建築などの天井改修工事での実績を積み重ねてきました(写真-1)。
今回、顧客ニーズの高い勾配天井や曲面天井にも適用可能な工法として改良および追加開発し、GBRCより新たに性能証明(GBRC 性能証明 第22-20号)を取得しましたので紹介します。

写真-1 文化会館ホールへの適用例

写真-1 文化会館ホールへの適用例

『帯塗くん』の技術概要

鴻池CSFP工法(帯塗くん)は、既存建物を対象としたフェールセーフ型の天井落下防止工法で、繊維強化塗料(短繊維を混入して補強した塗料)を隣り合う天井板同士に跨るように塗布することで、天井表面材を接着・一体化し、地震時に落下することを防止する工法です。天井下面に受けワイヤのある「帯塗・ワイヤタイプⅠ」と「帯塗・ワイヤタイプⅡ」(図-1)、および拡頭ワッシャーを用いた「帯塗・拡頭ワッシャータイプ」(図-2)の3種類があります。なお、いずれのタイプもフラットな天井だけでなく勾配天井や曲面天井に適用可能で、天井の状況に応じてタイプを選択できることから、工法の適用範囲が拡がりました。

図-1 天井の適用条件(帯塗・ワイヤタイプⅠおよびⅡ)

図-1 天井の適用条件(帯塗・ワイヤタイプⅠおよびⅡ)

図-2 帯塗・拡頭ワッシャータイプの断面図

図-2 帯塗・拡頭ワッシャータイプの断面図

○帯塗・ワイヤタイプⅠ
天井面下からの施工を前提としたワイヤタイプで、天井面に作業用兼金物配置用の開口(φ105mm)を設けて独自の連結金物により天井受けワイヤと吊りワイヤを連結します。
○帯塗・ワイヤタイプⅡ
天井内部からの施工を前提としたワイヤタイプで、ワイヤタイプⅠのような天井面の開口はありません。独自の連結金物および吊りアングルを介して天井受けワイヤと吊りワイヤを連結します。
○帯塗・拡頭ワッシャータイプ
天井内部からの施工を前提とした天井板補強タイプの工法です。拡頭ワッシャー付きビスで天井板と野縁を補強し、耐震クリップを野縁と野縁受けの交差部に取り付け、その箇所に吊りワイヤを取り付けます。
なお、3タイプとも健全性の確認された吊りボルトに吊りワイヤが連結されていることから、地震時の作用で生じる荷重を支えられる仕組みになっています。

『帯塗くん』の特長

塗膜とワイヤなどを組み合わせたユニークな工法で、多くの材料試験、ユニット試験、振動台試験および解析によって落下防止効果を確認しています。主な特長は以下の通りです。
 ① 短工期 :解体・新設の半分以下
 ② 低コスト :大幅なコストダウン
 ③ 勾配OK :勾配・曲面天井にも適用可
 ④ 無臭無害:無臭の水溶性塗料使用
 ⑤ 美観性 :見た目もそのまま
 ⑥ 安心安全:技術性能証明取得済

おわりに

既存天井の改修ニーズは高く、多くの相談が寄せられています。今回の性能証明取得を機に『帯塗くん』の特長を活かした改修提案を積極的に展開することで、地震による天井落下被害の低減に少しでも貢献したいと考えています。
なお、当工法はCSFP工法協会(㈱鴻池組、鴻池ビルテクノ㈱、㈱桐井製作所、日本樹脂施工協同組合)により開発、運用されています。

帯塗くん

帯塗くん

508号(2023年1月1日)の記事

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