鉄骨造倉庫の外壁工事の省力化

北港食品流通センター

大阪本店 工事事務所
河野 紀幸

はじめに

北港食品流通センターは、大阪市此花区舞洲に建つ冷凍・冷蔵倉庫であり、当社設計施工の建物です(写真-1)。
工事においては、早期引渡しによるオープンが着手前からの目標であり、鉄骨工事、外壁工事を短期間でとりまとめ、内部断熱工事へとスムーズに移行していくことが最優先の課題でした。この課題をクリアするべく、以下の工法を採用しましたので紹介します。

間柱と胴縁の一体化施工(写真-2、3)

通常、間柱を取り付けた後、胴縁をセットしていくことになりますが、本工事の場合、階高が6.1~7.8mあり、ピッチ@600mmにて割り付けると10~13段の胴縁が必要になり、揚重機が胴縁の取り付けに拘束されてしまいます。そこで、事前に間柱と胴縁を地上で先組みし、一体化した状態で取り付けました。安定した場所で取り付けることができるので効率があがるとともに、鉄骨の揚重部品数を減らすことが可能となり、建方工事の工期短縮に寄与しました。また、床デッキ施工の後、直ちに一体化した胴縁を取り付けるので、スラブ端部の開口がない安全な状態を次工程である鉄筋工事、コンクリート工事に引き 継ぐことができました。結果として、クレーン、鳶工事、仮設ネット等の合理化につながりました。

移動式足場による外部足場の省力化(図-1、写真-4、5)

鉄骨工事完了後、外壁角波フッ素鋼板を取り付けるための外部足場が必要になります。通常、全面足場にて角波を取り付けますが、当工事では、建物長辺の東西二面に移動式足場を計画しました。
今回計画した移動式足場は、5スパン17段の枠組足場の四周をトラス式ビームおよび支柱(パーフェクトビーム)に緊結したもので、軌道レール上を電動モーター式台車にて水平移動することが可能です。
足場の下部は、コンクリート土台のうえに軌道レールをボルト固定し、そのレール上を転がるローラーと挟み込むガイドローラーで構成された台車があります。上部はあらかじめ鉄骨にナット(M36、@4000)を工場溶接しておき、現場にてH形鋼をボルト接合してガイドレールとします。このH形鋼をパーフェクトビームに取り付けたガイドローラーにてつかむ要領で面外力に対して移動式足場を保持します。
トラス支柱は□-450×450の2本構成で、控え柱の形状となるように、上部、中間部、下部が緊結されています。この構造にて、枠組足場が受ける風荷重に対して、最上部と最下部の二点支持にて安全となるように設計されています。
この移動足場を使用することで、足場架設に要する日数を約1/4に工期短縮することができました。また、足場繋ぎがありませんので、足場解体時の後工事がなく、止水面での品質を高めることとなりました。

外壁材運搬台車による省力化(写真-6、7)

敷地西側は隣接道路との間が5mしかなく、クレーン等の揚重機を配置することができません。その狭小な施工エリアにおいて、外壁材である角波フッ素鋼板(1枚22.6kg)を水平に約100m、垂直に約30m運搬して取り付けることになります。
水平運搬には、外壁材運搬台車を製作しました。台車にU字形金物のガイドを取り付けた簡易なもので、材料は市販品です。U字形金物が移動式足場の下部レールをまたいでいるのでレールに沿って動きます。台車を連ねることで長尺材に対応が可能となり、6mある長尺材(重量15枚にて339kg)も作業員2名にて水平運搬が可能となりました。所定の位置まで水平運搬した外壁材は小型ウインチにて巻き上げ揚重します。小型ウインチは移動式足場の頂部パーフェクトビームに取り付けました。外壁材を手運びすることなく所定の位置にセットすることで的確にビス止めすることができました。

おわりに

今回、鉄骨造倉庫の外壁工事における施工の省力化工法について紹介しましたが、今後も大型流通・商業・生産施設等でも採用・応用され、幅広い用途で役立つと考えます。

工事概要
工事名称 (仮称)北港食品流通センタ-新築工事
工事場所 大阪市此花区北港白津1丁目1番19、20
設計・監理 (株)鴻池組
施工 (株)鴻池組
工期 平成17年9月~平成18年6月
構造・規模 S造 地上4階
建築面積 8,965.44m2
延床面積 24,124.19m2

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427号(2007年02月01日)