開孔配置の自由度アップ『近接開孔基礎梁工法』

技術研究所 村上 秀夫 

はじめに

鉄筋コンクリート造建物の基礎梁には、人通孔とともに複数の設備配管孔を設けることが多くあります。その際、設けられる開孔の中心間隔は、構造規定により、隣接する開孔径の平均の3倍以上を確保する必要があります。しかしながら、基礎梁は梁せいが大きいため、柱際のヒンジ領域を避けると開孔の設置可能な範囲が狭くなり、複数の貫通孔を設ける必要がある場合には、配管計画が困難となっています。近接開孔基礎梁工法(大開孔と中開孔が近接するRC基礎梁の補強工法)は、基礎梁における貫通孔配置の自由度を向上させるために、従来よりも近接して開孔を設けることを可能にした補強工法です。

工法概要

当工法における開孔の中心間隔は、隣接する開孔径の平均の2倍の位置まで近づけることを可能とした工法です。これにより、開孔を設けられる範囲が同じでも、設置できる開孔数が増えることにより、設備配管,電気配線などを迂回させずにほぼ最短距離で配置することが可能になります(図-1)。

 近接された開孔部の補強には、既製の開孔補強金物(ダイヤレン,ダイヤレンNS)を用います。開孔間は、集中してあばら筋を配筋し、開孔の上下部分では、開孔部上下補強筋を梁型に組みます。これにより、使用,損傷,安全限界時に、それぞれ必要な性能を確保することができ、開孔が1つの場合と同等以上の耐力を発揮していることを実験的に確認しています(図-2、写真-1)。

 当工法は、近接開孔梁研究会※1によって開発され、平成27年6月に一般財団法人日本建築総合試験所より建築技術性能証明(GBRC性能証明 第15-04号)を取得しています。今後は、建物の用途,上部構造の構造形式に関係なく、人通孔を有する基礎梁に複数の貫通孔を設ける必要がある場合に適用を推進する予定です。

 

※1 鴻池組を含む12社(鴻池組、青木あすなろ建設、淺沼組、奥村組、熊谷組、錢高組、東亜建設工業、飛島建設、長谷工コーポレーション、ピーエス三菱、三井住友建設、コーリョー建販)から構成

  

 

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482号(2016年07月01日)